航空機の品質保証の勘所について、また今年の執筆を始めます。

昨年11月から製品品質の作り込み活動に関して、各フェーズに分けて必要なツールをQtB(Quality Tool/Treasure Box)という形で話を進めてきました。(QtBについては、R1.11.8発信の第19回のメルマガをご参照ください

今回から数回に亘って、運用リスク管理/PFMEA(QtB I-2)をテーマとして取り上げます。PFMEAは、第14回(R1.10.4)で取り上げていますので、ここでは運用リスク管理の解説をします。

先ずJISQ9100の要求ですが、箇条8.1.1「運用リスクマネジメント」の中で次のように規定されています。

“組織は、適用される要求事項の達成に向けた運用リスクを管理するため, 組織並びに製品及びサービスに応じて適切に,次の事項を含むプロセスを計画し,実施し,管理しなければならない。“
とされ、次の事項とは、運用リスクマネジメントの責任の割り当て、リスクアセスメント基準の決定、リスクアセスメントの実施、軽減策の処置、残留リスクの受容  などの項目が挙げられております。

ここでは、「運用リスク」と言っていますが、JISQ9100の2008年版では単に「リスク」と表現されていたものです。その理由は、2016年版では、経営者が考える経営的な「機会とリスク」のリスクという用語と重なるため、製品及びサービスの提供に必要な運用プロセスに関連するものに限定して運用リスクと名付け、区別したものです。

運用リスクとは、平たく言えば、“新しく製品を受注した場合などで、設計、製造に関わる新しい事項であらかじめ検証すべき心配事項”ということが出来ます。

運用リスクは、取り組む対象製品で異なりますが、部品レベルのサプライヤの場合では、具体的な事例としては、
・新しい精度が要求される部品を受注するが、新しい工法、あるいは新しい機械の導入で精度が実現可能か?の心配事項がある。
・特殊プロセスが要求されるが、自社では経験がない。外注業者を使うが、プロセスの知識が自社にはない。業者の選定ができるか?
 技術要求に見合った品質を提供してくれるか?などの心配事項がある。
この心配事項を運用リスクと考えればいいわけです。

そしてその運用リスクが万一解消できないとしたときに、
① 品質にどれだけ致命的か?
② その運用リスクは、頻度高く発生するか?

などの観点から、それぞれ大きさを点数化(RPN: Risk Priority Numberという)するなどして、大きい点数のものから、その運用リスクを解消する手段を予め検討し、対策を取ります。そして、実際の生産にまで運用リスクが残らないような対応策を可能な限り事前に検討して実行することが大切です。

PFMEAもRPNで評価することで、このリスク管理とは少し似たところがあると思われるかもしれませんが、PFMEAは、工程毎、特性毎などで不適合が発生するかどうかを検討し、その発生の可能性、不適合の影響度、検査で見つけられるかを個々に見ていくもので、この運用リスク管理とは、目的が異なっています。

次回からは、具体的な運用リスク管理の進め方に関して説明します。