デミングの「深淵なる知識の体系」と品質マネジメント(その3)
今回は(その3)として、JIS Q 9100の要求である「倫理的行動(コンプライアンス)」と人間性の理解について書いてみようと思います。
「JIS Q 9100 7.3項 認識」には
“ 組織は、組織の管理下で働く人々が、次の事項に関して認識をもつことを確実にしなければならない。
h)倫理的行動の重要性 “ とあります。
更に
『2023年2月28日付 当社コラム「【#4】JIS Q 9100:2016の要求事項 認識」:古郡 秀一 筆』で紹介された通り
“日本航空工業会では、その不正防止のための取組みとして航空宇宙工業会規格SJAC 9068B「品質マネジメントシステム ― 航空、宇宙及び防衛分野の組織に対する要求事項 ― 強固なQMS構築のためのJIS Q 9100補足事項」を発行し、JIS Q 9100:2016版に追加要求するかたちで不正防止の取組みを要求しています。”
そのSJAC 9068Bのガイダンス文書では主要改善事項を
①意識の再徹底
「飛行安全」、「コンプライアンス」、「品質第一」及び「作業指示書遵守」の意識の再徹底
②相互コミュニケーション及び監査による問題解決と再発防止
「現場」の声に耳を傾け,第一者/第二者監査を実施して問題解決と再発防止を図る
③AQMS プロセス改善
人的要因を極力減らすためのしくみを推進すると共にAQMS プロセスを改善するとしており、①&②が不正防止意識の啓発となります。
心理・行動経済学者のダン・アリエリーは『ずる 嘘とごまかしの行動経済学』で“ 正答1問ごとに報酬が支払われる実験で、正答した数を自分で数え、回答用紙はシュレッダーで破棄してしまい成績を自己申告すると、つまりごまかしをするチャンスがあったとき、多くの被験者が成績を水増しした。
一方で実験の直前に、聖書の十戒をできるだけ思いだして書いてもらったり、「この実験が倫理規定のもとに行われることを承知しています(実際には倫理規定は存在しなくても)」に署名してもらったりすると、ごまかしをしなくなる “
さらに、
“ 数週間前に行われた倫理研修には不正を防ぐ効果はない ”という実験結果を紹介しています。
先に上げた「意識の再徹底」、「相互コミュニケーション」や「監査」は、内容もさることながら、それを実施するタイミング、不正の誘惑を感じたその瞬間に道徳規範を思い出させること、が非常に重要だということになります。
エアバス社は
“ コロナ禍の状況下においては、「ダーティー·ダズン」※として知られる12のヒューマンファクターが増幅される可能性があります。そのため、これらの要因に対していつもよりしっかりと注意を向ける必要があります ”
という注意喚起を強調し、改めてコロナ禍の今だからこそ注意すべきであると「ダーティー·ダズン」を展開しています。
人間性を理解するという観点からすれば、効果のある不正防止意識の啓発は、“ コンプライアンス教育は毎年この時期に! ” というやり方を見直してみるのがいいのではないでしょうか。
※カナダ航空当局が、航空機の運航、整備環境における分野で最もヒューマンエラーを誘発しやすい要因を12にまとめたもので、その中には「プレッシャー」や「悪い習慣」などコンプライアンス違反につながる要因も含まれています
文責 原田 直弥
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