あるQAマンの体験記 第15回 QMS(品質マネジメントシステム)推進を担当して

 現在のJISQ9100の要求では、システム構築の推進役として、管理責任者を置くという規定があります。40年近く前になりますが、筆者は、事業所の品質プログラム/業務規程の管理担当を2~3年やらせていただきました。今でいう管理責任者の下で実務を展開する担当者のような役割を仰せつかっていました。

 当時は、主要顧客の防衛省(当時は庁)関連の契約では、個別の仕様書があり、

・DSPZ9001(品質保証共通仕様書):システムの規模が大きく開発要素のある製品に要求
・DSPZ9002(品質管理共通仕様書):開発要素がなく、製造品質主体の製品に要求
・DSPZ9003(検査仕様書):検査することで品質が担保できる製品の要求

3つのカテゴリーで調達品の規模と、品質保証の対象レベルで使い分けられていました。

また、これ以外にもボーイング社、PWA社などの顧客に固有の品質保証要求があり、それにも満足するQMSを構築することが求められました。(まだ、ISO9000シリーズの要求などがない時代でした)

DSPZ9001で要求される文書体系は、現在JISQ9100認証取得企業の持っている一般的な体系と当時からほとんど同じで、品質マニュアルに相当するものを品質プログラムという表題で整備し、それを補足するために事業所レベルの業務規程(所標準と呼んでいました)を20~30点整備し、更に各部門の手順書(部標準/課標準と呼んでいました)に展開していくという体系でした。

また、お客様毎の要求に関しては、品質プログラムで規定しきれない要求を特約条項として別に個別品質プログラムを作成するような形で運用していました。

6000人くらいの人員を擁し、多様なお客様に対応している大規模の工場であり、業務規程/手順書の体系は多階層で整備されていました。
担当として心がけたのは、新しく必要になる業務規程/手順書があれば、新たに作成する。(あるQAマンの体験記 第12回、
第13回などで紹介)
また、既に作成され運用されているものは、定期的に見直すことでありました。特に定期見直しのポイントは、あらかじめお客様の要求の改訂などに注目し、改定のポイントを各部門への展開に先立ち自分も考えておく。そして、実際の見直しを掛ける際は、業務規程/手順書毎に主管部門が決まっているので、そこに改定のポイントを伝えて改定依頼をしていました。

定期見直しを依頼すると、それぞれのレベルで見直され、濃淡が大きく出るためポイントを伝えたもので、それなりの効果はあったと思います。

ここで学んだことは、品質保証システムを作るということがどういうことかということで、
①品質保証のシステムは、眼に見えないものであり、よって品質を保証する手順を先ず文書化することから始まる。
②そして社員全員がそれを正しく理解し、規定どおり実践し記録する。
③更に、それが正しく実行されていることを内部監査で確認して自浄作用を持ち続けることである。そして適合性のみならず有効性の評価もする。

QMS推進担当の責務は、第一義的には上記の①をまとめ上げることであり、顧客要求を満足した業務規程/手順書を作ることは当然ですが、それが確実に運用されているところまで(上記の②と③)フォローしていくことの大切さも学びました。 一見地味な仕事ですが、非常に大切なものだと感じています。若い時に経験できたことが、その後もいろんなところで役に立ちました。

文責 山本 晴久

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