あるQAマンの体験記 第14回 QA診断を経験して!
QA診断とは、当時(40年くらい前)本社に生産技術部というところがあって、各事業所の主として生産技術の他、設計、製造、検査からも経験者を集めて、各事業所の生産活動の優れたところの横展開(いいとこ取り)を推進する機能を持っていました。
その部署は、各事業所で重大で根深い品質問題などが発生すると、その解決のため支援する役目を持っていました。また、技術解説書の他、各事業所で持っているモノ作りのノウハウなども資料化し(表紙の色から赤本と称していた)各事業所に配布し、よく活用されていました。
その部署が、2~3年に一回、各事業所を回り、主として新規開発プロジェクトの進め方などQA診断と称してレビュー/サジェスチョンをすることを一つのイベントとしていました。筆者のいる事業所でもこの診断を受けることになり、筆者の在籍する品証部門が事務局になりアレンジすることになりました。
先ず、受審対象プロジェクトの選定から始めることになりましたが、同じ受審するなら、大きなプロジェクトがよいと考え、新しい考えの飛行性能を持った将来戦闘機の実験機の位置づけになっている開発プロジェクトを選定しました。
次に、受審する開発設計担当課の了承を取ることが必要になりました。本社の診断を受けるには新たな準備が必要になり、開発設計担当課で超多忙を極める設計者には、対応してもらえないだろう思いながら担当主任に相談に伺ったところ、予想に反して快諾していただき “よし、やろう!” ということになりました。
担当主任が言われるには、“今、プロジェクト管理に苦労しているが、自分達とは違う製品分野で経験されたことを是非ともお聞きしたい。自分は、大きなプロジェクトをどのように動かせばいいかに深い興味を持っている”ということで、柔軟な見識を持っておられる方でした。後に、事業所長を経て社長、会長にまで進まれた方で、”やはりその時から少し違うなぁ“と思ったものです。
さて、このQA診断ですが、
・開発要求の確認
・開発計画の作り方と推進方法の確認
・設計検証(デザインレビュー)の進め方と実施内容の確認
・試作機の製造計画の確認
・開発リスクに関する検証
などをテーマに審査が進められ、貴重な意見交換がなされた記憶があります。
国を挙げての一大開発プロジェクトであり、各開発/試作ステップ毎にいわゆるゲートコントロールがどのようになされているかを航空宇宙の専門以外のメンバーから診断するということで、大変興味深いイベントであったと思います。社全体の開発経験の知見を広めることに一役買っていたのがこのQA診断でした。
今、JISQ9100のQMS要求では、開発、設計、製造、納入、サービスに至るまで品質を作りこむためにやるべきことが要求事項として明確になっています。この当時は、公共の規格要求はなく、顧客からの要求でシステムを作っていました。それが現在のJISQ9100のQMS要求にもつながっているのだと考えています。
現在、航空機の開発生産における品質マネジメントの要求がありますが、このルーツをたどることも興味のある所ではないでしょうか?
以前、メールマガジンでこのQMSのルーツに少し言及しています。ご興味があれば、下記をご覧ください。
第1回:JISQ9100の成り立ち
第2回:品質マネジメントとは?
第3回:品質マネジメントの原則
第4回:石川馨博士の語録から
文責 山本 晴久
当社では主に航空宇宙の品質に関わるご支援をしております。
以下、リンクです。
・JIS Q 9100:2016 認証取得支援
・Nadcap 認証取得・更新支援
・JIS Q 9100:2016 規格解説セミナー
・JIS Q 9100:2016 内部監査員養成セミナー
・その他、お気軽にお問合せください。