QMS関連の管理要求について 第3回 ~SJAC9068とは?1~
前回までの2回に亘りIAQG制定規格のうちSJAC規格化したSJAC91XXシリーズを解説してきましたが、今回と次回に亘り、JAQG(IAQGの日本の下部組織)が制定したものをSJAC規格として発行したSJAC9068B「品質マネジメントシステム-航空宇宙及び防衛分野の組織に対する要求事項-強固なQMS構築のためのJIS Q 9100補足事項」の解説を行います。
この規格は、数年前からいくつかの企業で発生したコンプライアンス事案を受けて日本で固有の要求をJISQ9100に追加する形で要求したもので、更に先月末にB改定が発行されています。B改定で要求が具体的で厳しくなっていますので、これを主体に解説し、今回のB改定でのパブリックコメントも参考に読み解いています。各箇条のところで(注)というのは筆者の注記です。またアンダーライン部はB改定です。
箇条1. 序文:
まずQMSをより強固にするポイントとして、「品質に関するコンプライアンスの意識徹底」、「現場の声に耳を傾けて問題解決」、「製品最終使用者への影響の大きい流出不適合防止強化の仕組みの推進とA(Aerospace)QMSプロセスの改善」の3つが挙げられています。
(注)このようなコンプライアンス順守の要求は、日本以外にはないと聞いています。
箇条3. 定義:
コンプライアンス、現場、不祥事に加え、不正行為(コンプライアンスからの意図的な逸脱行為)と生データ(最初に取得された状態のままのデータ)がB改定で追加されました。
(注)B改定で、不正行為と生データが定義に追加されました。生データの存在を明確にし、生データからの適合の証拠となる記録のねつ造や改ざん等が不正行為となるため生データの確認まで要求した厳しいものになっています。
箇条5.リーダシップ:
製品安全の確保の大切さ、コンプライアンスも含めた製品品質の要求事項を満たすことの大切さの観点からQMSへの適合が重要であると理解させるとあります。
(注)コンプライアンスは、トップからボトムまで全員が認識する必要がありますが、トップの考え方や行動に対する責任は重いものがあります。
箇条6. リスク及び機会への取り組み:
不祥事未然防止の観点を考慮することが望ましいと明記されています。
(注)パブリックコメントで機会が追加されました。機会とは追い風を受けて事業を伸ばせるような事業環境にあるというような場合ですが、一気に事業を伸ばすために無理をすることが不正につながることがないようにという意味でしょうか?
箇条7.1. 資源:
既存の内部資源の実現能力及び制約の考慮にあたって、事業活動実績を考慮した定量的評価を行うようになっています。(B改定)
(注)人とか設備が足りない状況で生産を続けることで、疲弊した状況に陥るとコンプライアンス違反も出やすいということでしょうか?
箇条7.3:認識では、コンプライアンスの重要性の教育・啓発活動を繰り返し実施する。そして外部での不祥事について、必要と判断した場合にはその事例を教育・啓発活動に含めるとあります。
(注)外部で起きた事象は自社にもありうるという観点で「他山の石」にするということでしょう。
箇条7.4. コミュニケーション:
内部からのフィードバックには、規定通りの作業が困難な場合、契約上の顧客要求事項を満たすことが困難な場合、又は不正行為につながる恐れがある場合(B改定)には、現場からの意見を吸い上げ、問題解決を図るため、ボトムアップコミュニケーションを含めるとなっています。
(注)いわゆるエスカレーションルールというのがあります。コンプライアンス違反があれば、担当は、先ず職長に、そこで聞き入れられなかったら、係長、課長、部長にというように上位者に順に持ち上げることが大切です。
箇条7.5.3:文書化した情報:
記録の管理は、厳格な法令、規制要求、顧客要求に従う。この教育を繰り返し実施する。更に記録に対する意図的な不正は、顧客の信頼を損ね法令、規制上の罰則の対象となるとまで言っています。(B改定)
(注)意図的な不正は罰則の対象と言われています。まさに強権発動ですね。
長くなりますので今回はここまでとし、次回は箇条8以降を説明します。
文責 山本晴久
「続き(第4回)を読む」
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