契約要求事項の理解 第1回 ~JISQ9100の要求から~
契約要求事項の理解 第1回 ~JISQ9100の要求から~
いつもコラムを読んでいただいてありがとうございます。昨年10月23日に発信させていただいた連載コラムのバックナンバーのご紹介でも触れました通り、”QtB(Quality Tool/Treasure Box)=品質の玉手箱“ で一連のツールを解説してきました。
全体の8割近くのテーマを掲載してきましたが、未掲載の一つである「契約要求事項の理解」というテーマで何回かに亘り、話をさせていただきます。地味なテーマですが、仕事の原点で重要なところです。
先ず、JISQ9100の中で要求事項に関する規定を見てみましょう。下記に示す箇条8.2.2の太字部分以外は、ISO9001の要求と全く同じです。
箇条8.2 「製品及びサービスに関する要求事項」が該当します。
要求事項の範囲を理解し入手したうえで(箇条8.2.1)、
要求事項の内容を明確に理解すること(箇条8.2.2)、
更に自社でその要求が満足できるかをレビューすること(箇条8.2.3)が求められます。具体的には、下記の通りです。
箇条8.2.1のコミュニケーションでは
・製品サービスに関する情報
・引合い、契約又は注文の処理
・苦情などの顧客からのフィードバックの取得に関するコミュニケーション (情報収集)が要求されています。
→ 即ち、製品サービスに係る情報とは、製品仕様書、図面/スペックなどの技術要求、品質保証要求などを含めた要求事項のことです。また、注目すべきは、納入後のクレーム情報もコミュニケーションを通じての顧客の要求事項とみなされています。
箇条8.2.2 「製品及びサービスに関する要求事項の明確化」では
・適用される法令/規制事項
・自らの製品を実現できること
・顧客からの特別要求事項
・運用リスクが特定されていることなどを明確にしなければならないとされています。
→ 即ち、法規制があれば、もちろんそれを満たすことで、航空法、同施行規則、サーキュラー、製造事業法などが該当します。そして製品実現に技術/設備などの面で対応可能かを検討します。また、製品開発/生産に当たり極めて高いリスクがあり事前検証が必要な事項(これを特別要求事項と定義しています)、更に新技術/製造能力(Capability)及び生産能力(Capacity)、短納期などの運用リスクの明確化が求められます。
箇条8.2.3 「製品及びサービスに関する要求事項のレビュー」では
下記の要求事項を満足できるかをレビューしなければなりません。
・顧客が規定した引渡し及び引渡し後の要求事項
・顧客が明示してないが用途に応じた要求事項
・自社が規定した要求事項
・法令/規制事項に関する要求事項
→ 即ち、箇条8.2.1と8.2.2で要求された事項を満足できるかどうかを自ら評価せよということです。ここで顧客が明示していないが用途に応じた要求事項にも満足しなければならないとされています。これは、Fit for Useとも言われるもので、航空機生産の世界では、仕様は技術要求として明確に記述されるべきとの考えが強いですが、一般産業界では、ユーザが使えないというものは、契約事項として書いてなくても暗黙の要求という概念に近いものと思われます。ここでは、先ずは外観であったり、いわゆる出来栄えということで理解すればいいと思います。
以上がJISQ9100に規定されている要求事項に関して実施すべき事項です。
具体的には、これらの要求は、取引基本契約書、発注仕様書、技術要求書、品質保証要求書等から要求されていくものです。
次回は、これらの文書の一般的な要求項目などに関して説明したいと考えています。
文責 山本晴久
「続き(第2回)を読む」
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