「検証活動の委譲」について考える 第3回

検証活動の委譲

3.受注者側(供給者)から見た「検証活動の委譲」と課題
発注者側がすべき検証(検査)を、供給者に委譲された場合、供給者はどのような課題があるのでしょうか。
①検証の委譲による制約の増大、例えば、検査員の制約(最終検査を実施した検査員以外の者による検証・検査の実施)
②発注者に代わる出荷時の書類作成及び記録の増大
③QMSの一部としての文書化が必要 等
が主要な事項と思います。

大したことはないと思いますが、SJAC 9117によれば、細部にわたり要求事項が定められており、十分理解して対応する必要があります。
以下は、SJAC 9117NC(2016年5月31日発行)による要求事項の抜粋です。
また、本メルマガの項目番号 例2. 2.1 3. 等の表示は、SJAC 9117NCとの番号とは整合していません。

3.1供給者の責任
3.1.1 供給者は、自社のQMSを制定し、それにDPRV(Delegated Product Release Verification)に関する要求事項を文書化すること。
3.1.2 供給者は、認定されたDPRV担当者の一覧表を保持すること。
3.1.3 供給者は、認定されたDPRV担当者が職務を実施できるのに十分な必要条件を満たしていることを保証する責任がある。

必要条件とは次のことである。
①製品に関連する文書類の利用
②DPRV活動をできるために必要な設備及び装置の利用
③製品検証を適切に実施するための十分な時間の割当て
④リリースされる製品に関連する未決の問題が全て対処できるまで、製品のリリースを停止する権限
⑤製品に関連する十分な知識を含む、文書化された実証できる習熟及び訓練
以下省略

3.2 製品リリースにおける検証を委譲された担当者の適格性認定/再認定
細部について省略

3.3 製品リリースにおける検証を委譲された担当者による製品のレビュー
3.3.1 DPRVは、製品のリリース毎に実施、かつ最終検査後の可能な限り出荷直前に実施しなければならず、最終検査を実施した人以外による独立したプロセス*1として実施されなければならない。
注記 独立したプロセス*1:最終検査の一環として「製品レビュー」を行ってはならないこと。

3.4 記録の保持
3.4.1 委譲する組織(発注者)は、次の記録を保持する。
省略
3.4.2 供給者は、発注者との契約要求事項に従って、DPRV活動からの指定された記録を保持すること。 以下省略
(以上、規格より抜粋)

4.供給者(受注者)の選択
前3.項である「検証活動の委譲」については、十分な検討が必要です。
発注者が、小規模企業(数十人以下の企業)に対して、「検証活動の委譲」を発注することはないと思いますが、供給者は、SJAC 9117NC(正確には、発注者がSJAC 9117NCに基づき定めた「品質管理仕様書」)の要求事項を十分理解して対応する必要があります。

なお、「検証活動の委譲」によって、“製品そのものの付加価値”が上がるわけではないので、「検証活動の委譲」に対価を検討しない(支払わない)発注者がいるようです。論外であることを添えます。

文責 門間 清秀

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