「検証活動の委譲」について考える 第2回

検証活動の委譲

1.発注者側から見た「検証活動の委譲」と課題

検証を委譲するには、次の①、②、③を確認し、適正と判断した場合に委譲する必要があります。
①検証を委譲する範囲、すなわち検証を委譲する製品と検証内容の明確化
②検証を委譲する委託先(「供給者」ともいう)のQMS体制及び検査員の力量の確認
③検証を委譲する購買製品の品質実績

検証を委譲した当初は、スムースに運用されたとしても2年、3年を経過後は、上記①の確認は当然として、②の検証を委譲した委託先のQMS体制の確認を、JIS Q 9100認証機関に任せきり、検査員及びその力量の確認は、
確実に実施しているでしょうか。また、③の検証を委譲した購買製品の品質状況(不適合率が少ないこと)の確認は、どのように実施しているのでしょうか。
まさに、「検証活動の委譲プロセス」をどのように監視しているのかということです。

現実は、委託先に任せっきり、そしていつの間にか放任していることはないでしょうか。顧客からの購買製品に対するクレーム、苦情等の急増で驚いていることはありませんか。特に検証委譲した製品の品質確認を、書類確認で領収している場合、受入検査での製品合格率は、100%となります。

これでは、検証活動の委譲プロセスを監視しているとは言えません。定期的にサプライヤの検査・試験書類などの信憑性を、自ら受入検査・試験又は源泉検査を行うことにより確認する必要があります。

参考:ある企業(発注者)に対して、過去3年間の「検証の委譲」の品質確認状況を質問したら、不適合は3年間 “ゼロ、0”と記録されていたので、“源泉検査又は受入検査を行った結果ですか”と質問したら、“何もやっていません。委託先が不適合“0”としていたので、100%合格としました”との回答がありました。何かおかしくありませんか? 2009年 大企業との質疑です。

航空宇宙品質技術者、及び検査員へのメッセージ:
・委託先への製品監査及び/又は源泉検査においては、“”で対応することが重要で、“”で対応しないことを“肝に銘じて”おいてください。

2.「検証の委譲」についての詳細な要求事項は、SJAC 9117NC “製品リリースにおける検証の委譲
(Delegated Product Release Verification:DPRV)”が2016年5月31日に制定されました。
(DPRVの制定は、JIS Q 9100:2016よりも早く制定)。
DPRV要求事項は、次のような事項です。

2.1 委譲する組織(発注者)に対するシステム要求事項
(1) DPRVの供給者を選定する基準を明文化する。
(2) 委譲の範囲及び制限事項を定め、文書化する。すなわち、品質管理仕様書等を定めて供給者に要求する。
(3) 供給者に変更事項を提供する。
(4) 委譲する組織のDPRVの維持管理を行う。
a) 供給者の品質パフォーマンスの定期的なレビュー
b) 製品の定期的な検査及び/又は妥当性の確認
c)供給者のDPRVプロセスの定期的なレビュー
d)供給者の低いパフォーマンスに対する処置
e) 供給者及び又はDPRV担当者に対する委譲を解除、一時停止及び制限する基準
これらの維持管理には、労力を要します。

2.2 発注者の課題
発注者にとって、「検証活動の委譲」を実施・展開するには、社内のシステム構築と供給者との調整・契約とそれに基づく運用が前提です。
具体的には、
(1) 購買部門、品質保証(管理)部門が中心となり、社内システム(文書化と運用)の構築。
(2) 供給者に対し「検証活動の委譲」に関する要求、例えば、「品質管理仕様書」作成、提示。
(3) 供給者との「検証活動の委譲」に対する対価の調整・契約。
(4) 上記2.1(4)の維持管理のための品質保証(管理)部門の人材の育成。
これらを(1)~(4)の1項でも運用できなければ、形骸化した「検証の委譲」になりかねません。
参考:2.2項は、2019年12月に、ある企業様と実践した事項の一部です。

★ 次回は、「検証活動の委譲」について考える その3
・“受注者側から見た「検証活動の委譲」と課題” について概説します。 以上

文責 門間 清秀

「続き第3回を読む」

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