航空機と自動車の品質マネジメントシステムの要求の違い 第4回

航空機と自動車の品質マネジメントシステムの要求の違い4 製品

前回は、APQP(先行製品計画)を取り上げましたが、今回はPPAP(生産部品承認プロセス)を取り上げます。

PPAPは、前回(第3回)コラムの中でフェーズ-4(製品・プロセスの妥当性確認)のところで「PPAPなど製造の妥当性確認」と記載していますが、APQPの5つのフェーズのうち、最初の4つのフェーズが完了した時点でAPQPの成果物を集約し、継続生産に対して顧客の承認を得る手順のことです。

ここでは、PPAPで要求される提出物/報告書の一覧表から主要なものを選び下記に示します。製品のレベルによって提出/承認を求められるものと記録を保有しておくものなどの差異があるようです。

製品設計文書 顧客の設計要求事項(顧客の信頼性目標、品質目標など)を理解して作成した製品図面、製品仕様書などの文書
DFMEA/PFMEA 設計工程の潜在的な故障モード毎にその影響の特定し、要因(重大性、発生頻度、潜在的故障の検出度など)毎にランク付けしリスク低減処置とその結果を評価
CP(製造工程管理方法を規定したコントロールプランでQC工程表と類似のもの) 製造工程の管理に用いるすべての方法を規定したCPを作成する。CPには、工程名、特性、管理方法(仕様/公差、測定方法、測定数量、測定頻度など)を規定
MSA 測定/試験装置の測定精度の評価のため、測定の正確さ、精密性及び不確実性に関する測定プロセスの選定と評価を実施
寸法測定結果 設計文書及びCPに規定されたすべての寸法について測定した結果を示したもので航空機のFAIの検査結果に相当するもの
初期工程調査(100個以上のサンプルで工程能力調査) 製品及び工程の重要特性(キー特性など)の測定データを収集し、Cpk指標(工程能力指数)で評価。Cpkが許容値を下回る場合は、バラツキ減少処置計画が必要
有資格試験所 製品検査、試験又は測定器の校正を行う施設を試験所といい、社内で行う場合も社外で行う場合も認定試験所など有資格試験所であることを示したもの
外観承認報告書(AAR) 顧客から外観品目として指定された製品に対して要求される。設計文書で外観要求事項が指定された場合は、個々の製品ごとの外観検査報告書
製品サンプル/マスターサンプル 顧客の評価用として量産と同じ工程で製造したサンプル、また生産の段階で判定の基準となるサンプル

以上が主要なものです。

PPAPは、量産品の品質が安定的に維持できるよう工程が確立していることに関して顧客の承認を得るプロセスで、航空機でもプロセス承認、部品ごとの承認など同じことが行われています。

CpkとかFMEAなど専門用語が出てきますが,次回以降に解説することにしています。

尚、筆者は、日科技連発行の「図解16949の完全理解 自動車産業の要求事項からコアツールまで」(岩波好夫著)を参考にさせていただきました。

文責 山本 晴久

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