ヒューマンエラーについての考察 第5回
ヒューマンエラー(H/E)対策についてですが、前回、H/Eは、組織の問題で人の注意力だけでは防げないという話をしました。そのことは、まさにH/E防止対策にもつながっています。即ち、人が起こしたミスであっても、対策は人に向けて行うよりは、出来るだけそれ以外の対策を考えなければならないということなのです。
その考え方を示した図が下記の図です。
ヒューマンエラーの解説書には、必ずと言っていいほどこの図が掲載されています。m-SHEL図といわれるもので、S(Software)、H(Hardware)、E(Environment)、L(Liveware)の4つの観点から対策を考え、そして m(Management)は、これらも含めてヒューマンエラーをマネジメントの力で防げるような管理をしようというものです。ジグソーパズルの絵になっているのは、これらを有機的に繋げてエラーを起こさないぞという意思表示のようにも見えてきます。
ここで具体的に考えてみましょう。
ヒューマンエラーの例として、航空エンジン部品の回転体の部品でキズがあり、これに気付かず客先に不適合が流出したとしましょう。ヒューマンエラーの典型的な例の一つで、見落としが原因です。この原因を掘り下げ、対策を検討していくときにこのm-SHELを頭において考えましょう。
Software | これらを要すれば準備する。 ・そもそも検査をする指示が手順書にあるか? ・またわかりやすく検査方法と判定基準が書かれているか? |
Hardware | これらを要すれば準備する。 ・キズを確認するスクライバー(※)などが準備されているか? (※引っ掻き棒のようなもの。エンジン部品などでは、よく使う) ・限度見本などが用意されているか? |
Environment | 必要なら改善する。 ・照明など十分か? ・暗くて見落とすことはないか? |
Liveware | 最後に人の教育、訓練でキズの定義の再確認、検査方法の再教育などももちろん必要です |
以上、見てきたようにSHELのキーワードをいつも頭に描いて、H/Eの対策を考える癖をつけてほしいものです。この際、今までのH/Eの対策など振り返ってみてはいかがですかm-SHELで考えることで案外、もっと有効な対策が簡単に見えてくるかもしれません。
次回は、ヒューマンエラーのまとめを行います。
文責 山本晴久
「続き(第6回)を読む」
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