デミングの「深淵なる知識の体系」と品質マネジメント(その4)

今回は(その4)として、これもJIS Q 9100の要求である「ヒューマンエラー」「ヒューマンファクター」と人間性の理解についてお話します。

「ヒューマンエラー」「ヒューマンファクター」人間性の理解そのものといえると思います。

航空エンジンサプライヤへの品質要求である『AS13100:AESQ品質マネジメントシステム―航空エンジン設計及び製造組織に対する要求事項』の解説としてAESQが提供しているeラーニング:AS13100 Supplemental Quality Management System Requirementsで、ヒューマンファクターズに関するJISQ9100への追加要求事項も説明されていますが、その中でロールス・ロイス社のQuality & HSE Executiveであるステファン・クロフォード氏が自身のinsightを紹介する中

“The defect prevention tools such as SPC and MSA have helped us to focus onour product and processes.However, we realized early on that we needed to focus on the human elements.”

と述べられています。

「SPC:Statistical Process Control:統計的工程管理」や「MSA:Measuring System Analysis:測定システム解析」は、デミングの『深遠なる知識の体系』のうちの「システムの理解」「ばらつきに関する知識」であり、「ヒューマンエレメント」が「人間性の理解」にあたるといえます。ステファン・クロフォード氏が述べている、SPCやMSAといったツールと人への理解、その両者へのフォーカスはまさにデミングの言葉と重なります。

前回紹介しました「ダーティー・ダズン」として知られる12の最もヒューマンエラーを誘発しやすい要因は

① コミュニケーション不足
② プレッシャー
③注意力の欠如
④ 知識の欠如
⑤ チームワークの欠如
⑥ リソース不足
⑦自信過剰、思い込み
⑧疲労
⑨ 自己主張の欠如(遠慮など)
⑩ ストレス
⑪ 状況認識の欠如
⑫ 悪い習慣

ですが 
ここで、次の2つの質問に答えてみてください。

【質問 ⑴】 「○○%のドライバーが自分は平均以上だと考えている」
【質問 ⑵】 スティーブは図書館司書でしょうか、それとも農家の人でしょうか?
      「スティーブはとても内気で引っ込み思案だ。いつも頼りにはなるが、
      基本的に他人には関心がなく、現実の世界にも興味がないらしい。
      物静かでやさしく、秩序や整理整頓を好み、こまかいことにこだわる。」  

質問⑴ の答えは、90%。
ほとんどの回答者にとって、まじめに正しく答えるのはまず不可能だ。なぜなら、平均的な運転のうまさとはどの程度のものかを先に考えなければならない。回答者は、平均とは何かを考えもせずに平均と自分を比べる。平均以上か以下かを、簡単か難しいかによって解釈するのである。まずまずうまくできていることについては、過度に楽観的になりやすい:「自信過剰からくる楽観主義」。

質問⑵ で、あなたは、アメリカでは男性の司書1人に対して農家従事者は20人以上いるという事実を思い出しただろうか。
『ファスト&スロー』 ダニエル・カーネマン
「ダーティー・ダズン」の⑦「自信過剰、思い込み」が「統計的思考」を困難にする事例です。

ダニエル・カーネマンは、人間の脳の働きを、自動的に高速で働く「システム1」と困難な知的活動に割り当てられる「システム2」という架空のキャラクターを使って説明しており、

「自信過剰、思い込み」の他にも、ヒューマンエラーの調査や分析において大きな障害となる「後知恵」、判断や選択における感情の役割などを紹介しています。

このような人間の特性を理解して、ヒューマンエラーの調査、分析、対策、教育などにあたれば、個人を責める傾向を排除し建設的で成果につながる活動ができるように思います。

文責 原田 直弥

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