【#1】JIS Q 9100:2016の要求事項 模倣品について

今回より4回にわたり、JIS Q 9100:2016の要求事項において、特徴的なものを筆者の経験と共に述べます。

第1回は、模倣品に関するものです。JIS Q 9100:2016年版では、
箇条3.1模倣品で、「正規製造業者又は承認された製造業者の純正指定品として、故意に偽られた無許可の複製品、偽物、代用品又は改造部品(例えば、材料、部品、コンポーネント)。 (注記は省略)」と定義され、そして
箇条8.1.4模倣品の防止で、「模倣品の使用と、顧客の納入製品への混入を防止するプロセスの計画・実施・管理」 要求が追加されました。

 これは、模倣品が出回る背景として、正規部品の製造期間より最終製品の製造・運用期間が長く、枯渇品が発生しやすいことにあります。また、高価な材料の使用や検査・試験の実施によりハイコスト製品であること、流通段階や、独立したディストリビューターが多く介在するために模倣品が混入しやすいなどの業界を取り巻く独特の環境が挙げられます。

このため、模倣品の防止活動は、組織の各プロセスや各部署で取り組む必要があります。設計検討段階では、旧式化・枯渇品の明確化や影響の検討を、購買段階では、購買要求として模倣品の防止要求、注文書へのQPLの明記や試験データの要求を、

受入検証段階では、模倣品のリスクを含めた検査や定期試験、適合証明証等のデータのレビューを、製造段階では、引渡し後の旧式化・枯渇に対するカスタマーサポートを、更に不適合品管理として模倣品や模倣品疑義品の再混入防止の管理などを求められ、これらは、模倣品防止プロセスとしての文書化(規定)と、関係者への模倣品の認識や訓練などで管理することが必要です。

なお、FAA(米国連邦航空局)では、SUP(Suspended Unapproved Parts)プログラムとして、未承認部品の使用による安全性の脅威となるリスクの軽減を図る目的で、不正品の疑いのある部品の検出と報告を含む資料とガイダンスを提供していますので、活用されるとよいかと思います。
また、JAQG SCMH 3.5章 模倣品防止についてのガイダンスでも紹介されています。

 筆者も20年位前、ヘリコプター用ガスタービンエンジンのFUC(燃料制御装置)で模倣品による事故事例を経験しています。
当時は、模倣品という言葉が今のように一般的ではなかったように記憶していますが、100円硬貨大のグリス潤滑型ボールベアリング(ボールとケージ部の両側がカバーされグリスの存在が確認できない状態)の新品が、オーバーホールでの取り付け後に数時間で焼き付きが発生したもので、グリスが封入されていな模倣品でした。

パーツカタログの部品番号により購入したものでしたが、包装箱には正規製造業者のラベルやロゴがなかったようでした。航空当局から購入方法に関する是正を要求され、正規製造業者から購入する、受入検証では正規製造業者のラベルやロゴを確認し、それをエビデンスとして残す などを対策として設定しました。

 材料を顧客から支給を受け、加工し顧客へ加工品として納入している組織や、部品を顧客から支給を受け、それを組み込んで上位製品として納入する組織においても、この要求事項に対応しなければなりません。それは、

箇条8.1.4の条文が、「組織は、・・・模倣品又は模倣品の疑いのある製品の使用、及びそれらが顧客へ納入する製品に混入することを防止するプロセスを、・・・。」と、されていますので、たとえ顧客から支給を受けた材料や部品などを加工や組立品に組込んで納入する場合であっても、組織として模倣品でないことを顧客に担保することが必要となりますので、支給を受けるときに顧客に文書等で保証してもらうなどがその対応例になります。

最後に、「SJAC9120A 品質マネジメント規格-航空、宇宙及び防衛分野の販売業者に対する要求」においては、「模倣品」に加え、「不正品」も定義されており、「承認された又は受入可能な設計データ及び適用する法令・規制及び顧客要求事項に従って製造又は整備されなかった部品」と、されています。

文責 古郡 秀一

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