海外民間航空エンジンに関する品質保証要求 本当に全箇所測定するのですか? 

品質保証事業部部長の竹内です
メルマガ配信させてもらうこととなりました。今回は第2回です。どうぞよろしくお願いいたします。
連載コラム 第1回 海外民間航空エンジンに関する品質保証要求

さて航空エンジンの品質保証要求に関してですが自分自身が今までで一番苦労した相手はロールスロイスです。
ここではロールスロイスの要求でちょっと厳しいなあなどと思ったところを紹介したいと思います。
それは100%検査。

ロールスロイスの品質要求はSABRe(セイバー)というもので、この中では原則として全数、全特性、全箇所の100%検査が要求されています。
全数というのはたとえば製品が10個あれば10個全部を検査するというもの。
全特性というのは図面に指示されている長さ、直径、角度などの要求特性のすべてを確認するというもの。
そして全箇所というのは同じ特性が複数ある場合それを全部検査するというもの。この要求が大変でした。

当時製造を始めた部品でエンジンの燃焼器というものがあり、これは冷却用の小さな穴が無数にあけられた構造になっています。穴の加工は同じ作業の繰り返しですので代表でいくつかの穴の大きさや位置などを確認すれば製品全体を保証することができるはずです。

ところがこれでは100%検査ではないので認められないとロールスロイスから言われてしまいました。

ロールスロイスの品質要求では同じ特性(この場合は穴)が複数ある場合それも全部測定が必要で、測定箇所を削減するには彼らの承認が必要だというのです。(SABReではこの測定箇所の削減をReduced inspectionと呼んでいます)

燃焼器の穴は製品1個に2,000個以上もあり、それを全箇所測定するとなるととても時間がかかります。
まさかこの部品で全箇所測定など考えてもいなかったので本当に驚きました。

本当に全部測定しないといけないのですか?と彼らと交渉したものの実際にデータを取得して問題ないことを証明しない限り承認する気は全く無さそうです。結局全箇所を測定することとなり、加工よりも検査に時間がかかるという大変な事態が続きました。

その後何度も何度も議論を重ね、加工や計測の安定度などを証明し、測定箇所を削減してもリスクは十分に小さいことなどを説明して1年以上もかかってようやく削減が承認されました。慣れない相手との交渉で本当に苦労したのですが、必要なデータを示して交渉するということは今ではよい勉強になったと感じています。

航空エンジン関連で検査の頻度を減らす手法についてはSAEのRM13002 Alternate Inspection Frequency Plansに示されています。検査を削減したいとか興味のある方は一度見てみてはいかがでしょう。

当社では、航空宇宙関係の品質保証に関するコンサルティングを行っております。
お気軽にご連絡頂ければと思います。


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文責 竹内 朗