あるQAマンの体験記 第5回 三次元測定機の初めての導入

あるQAマンの体験記 第5回 三次元測定機の初めての導入

あるQAマンの体験記 第5回 三次元測定機の初めての導入

筆者が入社した時は、部品の検査に三次元測定機はまだ使われてなくて定盤作業でティルティング機能を持ったインデックステーブル上に部品を固定し検査をしていました。現在使われている三次元測定機は、X,Y,Z軸に測定スケールを持っているため、タッチセンサーを使いながら、測定を瞬時に行いデータを取得し、あとはソフトを使ってデータ処理して穴径、穴位置、面の位置、形状など計算で簡単に求められます。

しかし当時の定盤測定は、スケールはZ軸(高さ方向をダイヤルゲージとハイトマスターを使って数値を読み取る方法)しかないので、斜めに開いた穴の位置などは、部品の姿勢を何度も何度も変更しながら、X軸、Y軸相当のデータをZ軸に置き換え計測していました。測定の難しさは、文章では表現できませんが、少し複雑な航空エンジンのギアボックスの測定などは、検査員が1週間くらいかけて汗だくで検査をしていました。超高技能の検査員の力の発揮しどころでありました。

定盤上で測定したデータの評価も、図面から単純には読み取れなくて手計算(電卓使用)でデータを求めながら判定するような難しい検査でした。計算を間違えると測定の評価ができないので結構大変でした。それほど高いスキル(計算力も)が必要で、10年位じっくり技能を身に着けないとできないような測定でした。

そのような検査をしていた時に、三次元測定機の導入を検討することになりました。定盤測定には限度があると感じていたので、三次元測定機の導入計画を入社2年目くらいから始めていました。一般の設備投資計画として申請していましたが、予算がつかず、2~3回見送られ困っていた時に、新しい型式の航空エンジン部品の生産が決まった段階で数台の加工設備の導入と共に三次元測定機の導入を幸運にも認めてもらいました。

本体の導入は認められましたが、恒温室が必要になるので、設置場所のネゴをして、製造設備の置かれていた恒温室の一角を借りることができ、何とか設置に漕ぎつけました。

また、検査員(オペレータ)に誰を選び、どう教育するかなども大きな課題でした。測定に高い柔軟性を持っている定盤測定を得意とする優秀な若手と中堅の検査員から最終的に4名選んで白羽の矢を立て、私自身も一緒に三次元測定機メーカから1週間の測定に関する手ほどきを受け、やっと準備ができました。

そこで気になったのは、どのくらいの測定精度が出ているか?測定の再現性はどの程度あるかというような三次元測定機の性能でした。今でこそボールを埋め込んだディメンジョンマスターなど校正マスターがありますが、当時はそのようなものがなく、定盤上に基準スケールを置いて測定精度の確認をいろんな方向で行い、またリングゲージを定盤上に一定の間隔で3~4個を固定し、何度も何度も測定を行い、繰り返し性の確認などを実施しました。何とか、工場で加工している部品の要求公差に見合った精度を有していることを確認しホッとしたことを覚えています。

今では、高精度なピックアップ(測定プローブ)があり、測定用の高度なデータ処理プログラムがあり、CADデータとの照合なども非常に簡単にできるようになっています。すぐに使い始めても、それなりのデータが簡単に出るようになっていますが、

  1. 測定器の原理はどうなっているのか?
  2. 測定してみてデータは安定していてばらつきはないか(繰り返し性は良いか)?
  3. 先輩検査員の測定データと自分の測定データに差はないのか(再現性は良いか)?
  4. 2と3は、自社の測定対象品の要求精度に対して十分な測定精度を持っているか?

など慎重に見極めることが大切です。測定器の能力がどんなに向上しようとも、測定の基本は厳然としてあり、原理/原則を知っておくことは必要です。

その三次元測定機は、10年くらい使われましたが、順次最新鋭の三次元測定機に置き換えられました。少し寂しい気がします。

文責 山本 晴久

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