航空機と自動車の品質マネジメントシステムの要求の違い 第2回

航空機と自動車の品質マネジメントシステムの要求の違い2

航空機と自動車の品質マネジメントシステムの要求の違い 第2回

 前回は、自動車関連の品質マネジメント要求事項であるIATF16949のことを少し紹介しましたが、今回は、その特徴を少し解説したいと思います。

 それぞれの製品には、大きくは下表のような特徴があります。

項目 自動車 航空機
お客様 B to C(個人消費) B to B
生産数量 大量生産 少量生産
部品点数 3万点程度 200~300万点
製造形態 自動化 手造り
ライフサイクル 10年程度 30年以上
価値感 コスト 安全

 自動車のQMS要求事項の特徴的事項として興味深いところを少し取り上げてみました。

①企業責任の規定
 贈賄防止方針、従業員行動規範及び倫理的上申など企業責任方針を決める。
②トレーサビリティとリコールなどの要求 (∵個人消費)
 トレーサビリティ管理をすることで万一リコールする場合でもリコール範囲を狭めることができる。また、リコールから学んだ教訓を生かせるとの要求などもあり
③生産計画にJITの要求(∵大量生産)
 JIT(ジャストインタイム)など顧客の注文/需要を満たす生産計画とする。
④設備にTPMの要求 (∵大量生産)
 保全目標を決め、対象設備には、故障した際の対応処置を決めておく。
⑤具体的な外観評価の要求 (∵個人消費)
 製品価値の中に外観評価もポイントの1つとされている。
⑥SPC(統計的品質管理)の要求 (∵大量生産、コスト)
 ばらつき、工程能力などの評価の要求あり。また、統計概念を従業員に理解させよとの要求まであり
⑦出荷停止などの迅速判断に関する要求 (∵個人消費、大量生産)
 製品責任者は出荷停止、生産停止権を持つ。
⑧5S管理などの要求
 現場の管理まで要求事項にするのが面白い。

 一方、航空機のQMS要求事項の特徴的事項では、

①H/Eに関する要求 (∵手造り)
 重大事故につながった事例もあり。(配線間違いなど)
(参考)自動車では、ポカヨケを実施する要求がある。
②安全管理の要求 (∵故障は人命に直結)
 故障すれば墜落の製品、地上で故障する自動車とは根本的に違う。
③形態管理の要求(∵大規模システム,ライフサイクル)
 開発期間が長く、その間の製品形態の管理が重要。量産になっても小さい部品まで製品の変更管理を厳しく行う。
④模倣品管理の要求 (∵安全)
 模倣品で航空事故につながった例もあり
⑤部品の枯渇化  (∵長ライフサイクル)
 航空機製品のライフサイクルにおいて、材料、部品等で旧式化・枯渇化の可能性のあるものについて、影響と再設計、運用支援など行えるようにする。

 このようにQMS要求の内容にも自動車、航空機という製品の違いによる差異が出ているところは、興味深いところです。

 次回以降は、IATF16949でコアツールといわれるものを順次紹介したいと思います。

文責 山本 晴久

続き(第3回)を読む

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