ヒューマンエラーについての考察 第4回

ヒューマンエラーについての考察

ヒューマンエラー(H/E)で知っておきたいことを今回は取り上げましょう。以下の3点です。

(1)ヒューマンエラーは組織の責任である。
(2)トリプルチェックでは、ミスは防げない。
(3)集中力は、高々50分しか続かない。

”ヒューマンエラーは、ミスをした作業者の問題でしょう” “ダブルチェック、トリプルチェックでミスを防ぎたい” “頑張れば集中力は持続できるのでは・・・“と思われる方も多いかもしれませんが、実はそれは間違いのようです。

(1)ヒューマンエラーは組織の責任である:
機械加工後のシャープエッジの角取り作業が狭隘部で、作業指示はあったが、作業が適正にされておらず、客先から返品されてしまいました。作業者が規定通り作業をしなかったということは

①マニュアルの存在を知らなかった。
②作業の指示があったが作業に無理があった。
③やり方も知っていたが忙しくてつい忘れてしまった。

などが考えられます。これらは、個人を攻めるのでなく、組織(会社)がそのような教育、トレーニングをしなかった、
スケジュール管理ができなかった、というように反省することが大切です。

(2) トリプルチェックでは、ミスは防げない:
ある実験データがあります。例えばエラーの検出の難しいケースで、1回のチェックで65%が検出できたときに、ダブルチェックでは80%に、そしてトリプルチェックでは、むしろ検出率が低下し65%になったというものです。確かに、3人でチェックすると思った瞬間、自分が見なくても他の2人がきっと見つけてくれるということで注意力が散漫になるからでしょう。H/Eの対策では、いい打ち手がない時など、チェックを多重化して防ぎたいでしょうが、効果に期待しない方がいいのかもしれません。

(3)集中力は高々50分しか続かない:
これもよく文献などに出ているデータで、ご存知の方も多いかもしれませんが、集中力を表す5つの段階があり、フェーズ0から4段階に分かれています。


・フェーズ0「無意識」      エラー率 “1.0”(基本的にはエラーをする)
・フェーズ1「意識ボケ」     エラー率 ”0.1以上“
・フェーズ2「正常・リラックス」 エラー率 “0.1~0.00001”
・フェーズ3「最も明晰状態」   エラー率 “0.000001以下”
・フェーズ4「興奮状態」      エラー率 ”0.1以下”

というものです。どんな明晰な状態でも100万回に1回はミスを起こすというものです。人間の集中力だけには頼れないということです。
(筆者も柳田邦夫氏の「フェーズ3の眼」という本をかつて読んだことがあります。大脳生理学でフェーズ3とは、事態の分析力や予測能力が最も発揮される良い状態で事件が多発する複雑化した社会で人はいかに「フェーズ3」に保つかを説いた本でした)

どうですか? ヒューマンエラーの対策は、人には頼れないということはお判りになったと思います。
次回は、いよいよ ヒューマンエラーが発生した時の対策について話を進めます。

文責 山本 晴久

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