【第7回:最終回】AMS2750Hの概説
~センサー/計器の校正、SATおよびTUSは、炉の管理の3本柱~
今回は最終回として、AMS2750Hの技術要求事項で概説が残っている事項、および全体のまとめを述べます。残っているのは、3.6項のLaboratory Furnaces(研究用炉)、3.7項のRecords(記録)、3.8項のRounding(データの丸め)および4項のQuality Assurance Provisions(品質保証条項)です。
3.6項の研究炉の概説については、ここでは割愛します。3.7項の記録では、使用するセンサー(主に熱電対を指す)、計器や延長線の校正、並びにSATおよびTUSの合格/不合格に関する記録の保持を要求しています。記録の保持期間は、顧客要求が無い場合には、5年間を要求しています。
3.8項のデータの丸め(四捨五入、切り上げ、切り捨て)では、適用する場合には、文書化した手順に基づき、一貫したやり方で実施するように要求されています。
4項の品質保証条項では、先ずユーザー(熱処理業者)は、すべての要求される校正および試験・調査の実行に責任を負い、またすべての適用される要求事項への適合に対する責任を負うことが要求されています。熱処理業者が校正、SATあるいはTUSの実施を外部の第三者に依頼する場合には、その第三者はILAC[i]公認の機関[ii]からISO/IEC17025の認定を受けていなければなりません。他方、熱処理業者の社内の要員が校正、SATあるいはTUSの実施する場合には、偶然誤差[iii]を最小化するため、それら行為や方法を必要に応じて詳細に規定した手順書を持つことを要求しています。
また、要員が、校正、試験・調査の実施、校正、SATやTUSの結果の評価ができる力量を持つ保証を求めています。校正や試験・調査の不合格が発生した場合には、その是正処置の記録の保持を要求しています。更に、部品または原材料の(熱処理、試験・調査の)処理条件が、要求されたスペック(仕様書)から逸脱している場合には、購入者(顧客)に通知することも要求しています。
次に全体のまとめを以下に記述します。航空宇宙防衛産業の熱処理業者が、先ず明確にしなければならないことは、自社がおこなう熱処理作業の対象が部品なのか、原材料なのか、また材質が鋼材なのか、非鋼材なのかです。その上で、顧客が要求する熱処理条件、特に管理すべき温度精度はどの程度か、また対象物のサイズ・形状を明らかにすることで、炉のクラス、炉の認定作業ゾーン(熱処理できる炉内容積)および計器タイプを決定できます。
そしてこれら情報を基にして、熱処理業者が炉の管理業務として実行しなければならない計器とセンサーの校正の要求精度や実施間隔、SATの要求精度や実施間隔、およびTUSの要求精度や実施間隔をAMS2750Hから読み取ることになります。
第1回で「おことわり」しましたように、今シリーズの記述内容はあくまで概要を述べたものであり、記録に関してみてもこのシリーズでは触れていませんが、記録すべき項目が詳細に規定[iv]されています。
ここで最後にお伝えしたいことは、センサーおよび計器の校正、SATの実施、並びにTUSの実施が炉の管理における3本柱ということです。また、熱処理業者が航空宇宙関連の熱処理作業に新規に参入する場合やNadcap認証取得を計画する場合には、AMS2750Hを精読していただきたい。特にNadcap認証取得の場合には、Nadcap審査機関であるPRIが開催しているWebセミナー[v]を事前に受講することを推奨します。
脚注
[i] International Laboratory Accreditation Cooperation(国際試験所認定協力機構)
[ii] 日本国内では、ILAC-MRA(相互承認)の認定機関は、IA Japan(独立行政法人製品評価技術基盤機構 認定センター)、JAB(公益財団法人日本適合性認定協会)、およびVLAC(株式会社電磁環境試験所認定センター)の3つの機関が該当する。
[iii] 測定のたびにランダムに発生するバラツキのことをいう。
[iv] センサーの校正の記録については3.1.11項を、計器の校正の記録については3.2.5項を、SATの記録については3.4.11項を、またTUSの記録については3.5.16項をそれぞれ参照すること。
[v] PRI開催のWebセミナー:https://www.p-r-i.org/courses/pyrometry-ii-aerospace-pyrometry-ams2750-pyro2#session=PYRO2-AO26302
文責:小山 隆一
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