【第5回】AMS2750Hの概説
~SATは、炉の温度精度保証の基本動作~
今回は、3.4項のSystem Accuracy Test(SAT:システム精度試験)について概説します。SATの定義は、「要求事項(許容SAT差)に適合していることを確実にするために、センサー、延長ワイヤ(含むコネクター)および計器の誤差または補正係数[1]の合計値を評価すること」[2]であり、熱処理装置(炉)の温度制御・記録システムとして制御・測定温度やその記録が正確なのか、を確認する定期 的行為です。

このため、SATの通常のやり方は、比較SAT法といって、校正され精度保証された現場試験用計器およびそれに接続されたセンサー並びに延長ワイヤ(含むコネクター)の温度読取り値と、炉に設置されて熱処理作業に使用しているの計器、センサーおよび延長ワイヤ(含むコネクター)の温度読取り値との差(これをSAT差と呼びます)を比較して求め、炉の温度制御・記録スステムが持つこのSAT差が許容値以内にあるかで判断します。右図は、比較SAT法を図解しています。
SAT差に対する最大許容値は、炉のクラス(第3回で概説)によって規定され、クラス1では±1.1℃、クラス2では±1.7℃、クラス3と4では±2.2℃、クラス5では±2.8℃、そしてクラス6では±5.6℃です。

またSATの実施間隔は、炉のクラスおよび計器タイプ(第4回で概説)によって規定されています。右表は、部品用炉[3]のSATの定期的な実施間隔を示しています。SATはこのような定期的な実施以外に、炉を最初に使用する前や計器やセンサーを交換した際等にも実施が必要となります。炉が予防保全計画(PM計画)に従って、維持管理されている場合には、この通常のSAT実施間隔を延長することが可能です。
SATの実施法には、上述した比較SAT法の他に代替SAT(Alternate SAT)法があり、また規定されている一定条件を満たせばSAT実施の免除(SAT Waiver)を受けることができます。
SAT差の合格/不合格、比較SATの結果、代替SATの結果、およびSAT実施の免除に関して、各々記録すべき項目が細かく規定されています。特にNadcap審査では、これらのすべての規定項目の記録の記載がなければ、不適合につながります。
まとめとして:熱処理作業の正味作業ではないSATは、熱処理作業に使用する炉のクラス、および計器タイプによってSAT差の要求値(要求精度)が異なり、また実施間隔も異なります。従って、顧客要求事項をよく確認の上で、自社の熱処理対象が部品か、原材料かを見極め、それに対して炉のクラス、計器タイプおよび使用センサーを決定し、それに見合ったSATを計画し、定期的に実施・記録する必要があります。
次回は、3.6項のTemperature Uniformity Surveys (TUS:温度均一性調査)について概説します。
【脚注】
[1] 誤差の補償値であり、例えばセンサー誤差が0.1℃ならば、その補正係数は-0.1℃となる。
[2] 厳密な定義は、AMS2750H 2.4.72項を参照のこと。
[3] AMS2750Hにおいては、炉は部品用および原材料用に区分定義されて、SAT実施間隔も夫々規定され、結果として異なっている。
文責:小山 隆一
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