【第3回】AMS2750Hの概説

~現場検査用計器の保有による日常的な校正作業、SAT及びTUSの実施~

 今回は、3.2項のInstrumentation(計器)について概説します。計器の主な機能は、前回概説した温度センサーから受取った微量電圧差を人が理解できるように温度値に変換、表示、記録や制御することです。
計器の種類は、基準標準用、1次標準用、2次標準用、現場検査用及び制御・過昇温・記録・データ収集用の5つに分類されており、前の3つは、研究室内で校正作業に使用される計器です。残り2つは、現場で日常的に使用される計器です。  

 基準標準用計器は1次標準用計器の校正に、1次標準用計器は主に2次標準用計器の校正に、そして2次標準用計器は主に現場検査用計器の校正にそれぞれ使用されるといった親-子-孫といった関係にあります。
現場の熱処理装置(炉の本体)に組込まれる制御・過昇温・記録・データ収集用計器は現場検査用計器によって日常的に校正される仕組みになっています。

従って最小限、熱処理業者は現場検査用計器を保有して、制御・過昇温・記録・データ収集用計器の校正、SAT(第5回概説予定)及びTUS(第6回概説予定)の実施を行わなければなりません。

校正の要求精度や最大校正期間は、5つの分類毎に異なります。現場検査用計器では、要求精度±0.6℃、最大校正期間6カ月であり、制御・過昇温・記録・データ収集用計器では、要求精度±1.1℃、最大校正期間は右表に示すように「炉のクラス」によって異なります。
熱処理業者は、炉のクラスを顧客要求事項等に従って事前に確認して、決定する必要があります。

この5つ分類された計器は、全てデジタル式のみが使用でき、アナログ式は使用できません。そして現場検査用計器および制御・過昇温・記録・データ収集用計器は、最少読取り値0.1℃が要求されています。 

また、全ての記録計器およびデータ収集用計器に内蔵されたタイミング(時間計測)機能は、少なくとも年1回、精度±1分/時間で校正する必要があります。

 制御・過昇温・記録・データ収集用計器の校正結果は、校正実施日、次回の校正期日、校正実施者および校正の制限や制約を記載した、通常「ラベル」表示として熱処理装置に直接貼るか、近接した見易い場所に貼ります。また、これら計器の校正結果は、記録として文書化されて、上記ラベルへの記載情報に加えて、校正検査用計器の固有識別、センサータイプ、要求校正精度、校正調整前データ(as-found data)と校正調整後データ(as-left data)、誤差または補正値、国際的に認められた標準機関へのトレサビリティ、熱処理業者(ユーザー)品質保証組織の承認等の情報を含む必要があります。

まとめ:熱処理業者の現場で使用する、現場検査用計器および熱処理装置に取付られる制御・過昇温・記録・データ収集用計器は、全てデジタル式でなければなりません。熱処理装置に要求される炉のクラスによって校正が、毎月~半年に1回の実施が要求されており、外部活用も可能ですが、現場検査用計器を手許に用意して組織内で実施するのが現実的です。

 次回は、3.3項のThermal Processing Equipment(熱処理装置)について概説します。

文責:小山 隆一

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