【#1】航空機への複合材適用について:複合材料の特徴

1.はじめに
航空宇宙分野では、機体構造などの軽量化の為に特に炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の適用が年を追うごとに拡大し、最近ではCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastic)無くしては航空機構造の成立性が無い場合が増加しています。

本稿では「複合材料の特徴」「航空機への適用変遷」「複合材の基本工法と主要設備」「複合材製品の品質管理」「複合材適用の課題と新技術の動向」の順番で紹介していきたいと思います。

2.複合材料の特徴
複合材料とは、いくつかの材料を組み合わせて作られた材料の事で英語では「Composite Material」と言い、複数の材料(強化材と母材)を組み合わせる事で一つの材料では実現出来ない優れた性質を持たせた材料です。複合材には様々な種類が有り航空機に限らず古くから使われてきました。例えば鉄筋コンクリートは、圧縮には強いが引張には弱いコンクリートと、引っ張りには強いが圧縮には弱い鉄筋を組み合わせる事で圧縮にも引っ張りにも強い材料として建築構造に使われてきました。

    空を飛ぶ機械である航空機にとっては構造の軽量化は永遠の課題であり、飛行機誕生以来「軽量&高強度」すなわち比強度の高い材料の適用が追及されてきました。金属と複合材の強度比較を示したのが下記の図-1ですが、単位重量あたりの強度は金属より複合材の方が数倍高い事が判ります。

    図-2には炭素繊維複合材の市場推移を示しますが、21世紀に入った頃から航空宇宙だけでなく、図-3のスポーツ用途、図-4の一般産業用途でも爆発的に市場が拡大している事が判ります。

    実際に複合材料を使用する場合は、複合材の繊維だけでは「糸」の様な状態で使いにくいので繊維に樹脂を組み合わせて「布」の状態にして使用します。この繊維と樹脂の組み合わせは、図-5&図-6に示す通り機体のどの部位に使用するかで強度特性&耐熱特性&コストを考慮して決定します。

    繊維と樹脂の組合せが決まったら、図-7に示す通り糸状の樹脂を布状の素材に加工した上で成形型などを使って部品形状に加工します。また機体構造のどの様な部位に使用するかに応じて、図-8に示す通り「織物材」「一方向材」「ロービング材」から選定します。例えば787主翼の場合は、エリア毎にどの方向にどれだけの荷重が掛かるか計算で決まっているので、0度/90度/45度の角度毎に一方向材を積層しますが、二次構造の小物部品の場合は織物材を使用します。またチューブ部品などの場合には円筒の型にロービング材を巻き付けて成形します。

    文責:丹羽 高興