#2_内部監査員の力量について

今回は内部監査の第2回目としての内部監査員の力量についてお話ししましょう。
JIS Q 9100(以降9100)では、内部監査員の力量管理は箇条の7.2項“力量”と、9.2.項“内部監査” が該当しますが、9100の箇条の例にもれず、内容が定性的です。ただし9.2.2項には注記としてJIS Q 19011“マネジメントシステム監査のための指針”(以降19011)が呼ばれており、ここでは力量設定のための有益な指針が示されています。特徴的な事項を以下に取り上げてみます。

1. 監査員の力量には“個人の行動”と、“知識及び技能”が必要
“個人の行動”とは何を示しているのでしょうか?これは監査の際に必要となる人間的特質を示します。19011 7.2.2項では次のように、実に13項目もの特質を列挙しています。

(1) 倫理的である、(2) 心が広い、(3) 外交的である、(4) 観察力がある、(5) 知覚が鋭い、
(6) 適応性がある、(7) 粘り強い、(8) 決断力がある、(9) 自立的である、(10) 不屈の精神をもって活動できる、
(11) 改善に対して前向きである、(12) 文化に対して敏感である、(13) 協力的である

     19011を編纂された方は、監査を効果的に進めるためには、上記のような特質を備えた人間が必要と、強く信じておられたのでしょう。当方も過去の内部監査員の経験より、大いに賛同するものです。誤解ないように追記しますと、7.2.3項には“知識及び技能”についての充実した内容の記述もあり、双方とも力量として必要なのですが、人間的資質要求の印象が強かったので、今回はこちらを主に紹介しました。

    2.監査チームにおける個々の監査員が同じ力量を備えている必要は無い
        この指針には“ただし、監査チーム全体としての力量は、監査目的を達成するには十分である必要がある”という文章が続きます。これも効果的に内部監査を進めるためには、示唆に富む内容と考えます。

    監査チームメンバは監査毎に、各部門から招集されることが多いと思います。業務経験や所属部門、監査経験等の各要素に基づく力量のばらつきは当然生じますが、これは監査での目の付け所のばらつきともなり、広い視野での監査も期待できます。

    ただしこのメリットは、監査員のばらつきを強みに変えられるような監査チームリーダーの存在が前提であり、調整能力や統率力が不十分なリーダーの下では、逆に視点がぼやけて、非効率な監査となってしまうリスクもあります。

    では監査チームリーダーとはどのような資質を備えていなければならないのでしょうか?
    次回はこの点についてお話したいと思います。

    また最近適用された航空エンジン向け品質保証要求AS13100では、監査リーダーとして Lead Auditor という新しい資格要件の要求あり、併せてご説明したいと思います。

    文責:小林 淳一郎