【第3回】宇宙産業に期待される品質マネジメント 無人機と有人システム、“QMS上の留意点“

●無人機の特徴
 “無人機”には、無人輸送システム(ロケット、無人有翼機、ドローン等)、衛星(実用衛星、試験衛星、科学衛星、小型衛星、等)が考えられます。今回は、スタートアップ企業が取り扱っている“小型ロケット、小型衛星”に絞って、私の経験を踏まえてQMS上の留意点を解説します。
 なお、無人有翼機、ドローン及び実験装置類については、考え方は類似ですが、次の機会を考えています。

 まず、宇宙活動法が適用される無人ロケットについては、QMS上の留意点は基幹ロケットと同等であるべきと考えます。が、JIS-Q-9100認証取得については、法規上の規定はありません。民間企業としての判断が優先されます。

 それ以外のシステム(小型ロケット、小型衛星、等)では、第3者への危害・影響を最小にするための“システム安全活動”は必須と考えます。よって、JIS-Q-9100 8.1.3製品安全に留意した設計・開発管理が必要です。ものづくりの観点では、一品開発か、繰り返し生産かで、QMS構築のレベルが異なると考えます。

 なお、小型衛星は、搭載し打上げられるロケットのペイロード要求(機体とのI/F・安全要求、等)への適合性・安全審査(顧客要求)、及び宇宙活動法(国内で運用管制の場合)の申請が必要になります。

●有人システムの特徴
 人が操縦、搭乗、活動するシステムは“有人システム”と区分できます。航空機であれば航空法、宇宙ステーションにアクセスするシステム・機器は、NASA/ESA/JAXA要求であるS&MA要求が課せられます。よって、顧客(JAXA、プライム企業、他)からのS&MA要求に従うことになります。S&MA要求では、JIS-Q-9100が直接は要求されずに、JAXA標準・メーカ品証仕様書への適合が要求されます。認証取得は必須ではなくても、同等の品質プログラム計画書に従った仕組み構築が必要です。

●一品開発品に求められるもの
 宇宙での一品開発では、(BBM→)EM→PFMの流れで一気に試作品をフライト品(PFM)に仕上げます。繰り返し生産ではありません。

プロジェクトチームを設置し、開発・製造・運用に責任を持つでしょう。よって、品証技術者もチームに参画し、設計・試作・試験に積極的に関与することが必要です。PFMからの対応ではついてゆけません。

品証技術者の重要な役割(プロジェクトチームの期待)は、(客観的な行為である)検査になります。検査行為の基本は、要求仕様に合致しているかですので、要求仕様書・図面等(の制定)を確認し、製造・試験に立会、作業指示書(の発行)を確認・作業記録を確認し、又は必要な記録を残すことが役割(期待度)です。これは、文書化のレベルは組織(プロジェクト)により様々ですがJIS-Q-9100の要求(特に、8.1.2形態管理)そのものです。(JAXA要求では、コンフィギュレーション管理)

●まとめ
 今回は、無人機のQMS上の留意点について、JIS-Q-9100要求項目の関係する箇条を参照にしながら解説しました。
 ポイントは、企業・組織・プロジェクトの方針を明確にした開発計画書・生産計画等で文書化のレベル・文書体系を宣言することではないでしょうか。(8.1運用の計画及び管理)

次回は最終回、第4回:新規に参入される企業の方々へです。

(参考文献)
「JIS-Q-9100航空宇宙QMS実務ガイドブック」:TFマネジメント
内閣府資料:人工衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律に関する申請マニュアル

文責:大脇 聡

出典画像:QPS研究所:iQPS Inc. (i-qps.net)