あるQAマンの体験記 第34回 検査の請負化
今回は、製造派遣に関する2009年問題を機に検査の構内請負化を進めたときの話をします。
お客様の重工メーカの検査現場では、品証研の多くの検査員が派遣の形で契約を頂いておりました。ところが製造業(派遣先)において、同一部署で連続3年以上派遣契約を結べなくなる2009年問題が起こりました。
もし派遣を継続するためには、3年間を超えた場合、一定期間(3ヶ月間以上)クーリング期間をおかなければいけないと定められていました。そうなると、その間の操業が止まることになり、派遣先の会社(お客様)は大きな損失を負うことになります。
派遣者が戻されると自分達も非常に大きな痛手になるので絶対に避けなければなりませんでした。その対策としては、お客様とも調整させていただいて、請負契約(構内請負)に切り替えることになりました。
その時のお客様の職場の業務体制は、社員の方で監督者と検査員が数名と、自社も含め派遣会社4社からそれぞれ2~3名の派遣検査員約10名を合わせて、計15名程度で構成され、お客様の監督、指導の下で検査業務が成立していました。
派遣者10名を戻すと検査は成立しないので、お客様は、派遣を請負に変えることを対策とすることを決心されました。
ここで問題は、4社がそれぞれ請負化を推進すると、4つのバラバラな組織となり、それは成立しないということでした。
そこで4社の派遣会社を代表して品証研が請負に名乗りを上げ、他の派遣会社は、派遣先を品証研に変えていただき、品証研からベテラン社員の投入と更に派遣会社から数名の追加派遣をしてだき、検査員を確保することにしました。他社から派遣受けをしている形になるので、3年後には、派遣問題が発生することになりますが、3年間で何らかの対策を講ずることでここでは、先ずは請負化で解決することになりました。
10数名規模の作業現場をスタートさせ、維持管理するためにやることは、非常に多くありました。まず、作業監督者の選出、請負としての組織体制の整備、作業管理体制の構築、設備の自前化など、何とか急場を凌ぎました。作業手順書は、作業を請負っている組織で作成する必要がありますが、OEM(ボーイング社)の承認が必要なものであったため、手順書は支給して頂きました。
事前準備を少しはしていましたが、請負化が正式に決まって3か月程度で準備する中で、いい経験ができました。その後、この職場は、航空機の生産レートが大きく伸び、20名規模まで拡大していきました。
請負契約は、派遣とは異なり、自社で品質保証ができないといけません。万一、検査ミスを起こすと、原因対策を即時報告しないといけないこと、職場の安全管理なども厳しく行わなくてはならないこと、JISQ9100によるQMSの認証取得もしないといけないことなど現場としての力は、大きく伸びたと思います。
この職場以外にも派遣から請負に切り替わったところも多く、検査プランニング力、設備を計画する力などが身につく機会になったと思っています。いったん逆風のように感じた2009年問題は、検査員が育つきっかけにもなるものでした。こんな努力の先に次回に紹介する計測センター設立につながりました。
文責 山本 晴久
当社では主に航空宇宙の品質に関わるご支援をしております。
以下、リンクです。
・JIS Q 9100:2016 認証取得支援
・Nadcap 認証取得・更新支援
・JIS Q 9100:2016 規格解説セミナー
・JIS Q 9100:2016 内部監査員養成セミナー
・その他、お気軽にお問合せください。