あるQAマンの体験記 第8回 ファンブレードの検査治具との闘い
前回はタービンブレードの検査の話でしたが、今回はファンブレードの検査の話です。検査治具を考案していて、目からうろこの経験をしたので紹介します。
ここで取り上げるファンブレードは、チタン合金製で前回取り上げたタービンブレードとは異なり、倍以上の大きさ(翼長:300mmくらい)で、翼の厚みも非常に薄く、軽量化されたものでした。そのファンブレードの検査治具を作った時の経験です。
実は、それまでの検査で経験したタービンブレードと、このファンブレードは、大きさとか材質だけでなく、ディスクに結合するルート部分の形状が異なっていました。
タービンブレードのルート部は、クリスマスツリー形状(図-1)と呼ばれるものでいくつかのギザギザがあるタイプで、ここで取り上げるファンブレードのルート部は、シングルローブ形状(図-2)と呼ばれるぎざぎざのないシンプルな形状のものでした。
通常、タービンブレードの各種寸法を測定するときには、ルート部を支持し、翼を直立する形で測定していました。翼長もあまり長くなく、更にルート部がいわゆるクリスマスツリーの形状をしており、両側から治具をアクセスし支持するといつも同じ姿勢でブレードを固定することができました。(図-3)
従ってこのファンブレードの検査治具を考案するときも、タービンブレードと同じようにルート部を固定し、ブレードを直立した形で検査することにしました。
その構想で治具を設計/製作して、検査に使おうとしてファンブレードを治具へ取り付けを行う段階になって、ブレードがまっすぐ立たずに倒れた姿勢でも固定されてしまうことが初めて分かりました。何度トライしても、いろんな姿勢でファンブレードが固定されるため、お手上げになりました。ブレードを一定のポジションで固定できるように固定点を追加する形で治具を改良して何とか問題解決することになるのですが、ブレードを立てた状態で固定できなかったのはなぜか?本来はどういう治具の構想にすればよかったのか?その後も悩んでいました。
そんなある時、目からうろこの事実に出会いました。
ある商社の方が、ブレードの治具の紹介に来られた時に、同じルート部がシングルローブタイプのブレードの検査治具の写真を見せてくれました。
その時にあっと驚きました。ブレードは立てて検査するものとの先入観がありましたが、その治具ではブレードを上下逆に固定していました。すなわちルート部の固定治具を上部に位置し、ブレードを吊り下げる形で固定していました。図-4のブレードルート部の左右のブレードホールド治具がルート部にアクセスし固定するというものでした。この方法であれば、自重で部品を吊り下げ固定するので毎回同じ位置で固定できる訳です。
まさにその写真を見たとき、“ああこうだったのだ!”と思わず叫んでしまいました。
原因は、ルート部のシングルローブの形状にありました。クリスマスツリー状になっていないため傾いたところでも固定されてしまうのが原因でした。
夜昼たがえず、一所懸命に考えるということの大切さ、そして解が見つからず、失望感を味わった後、思わずところで解を知る。なかなかできない経験でした。今でも治具の写真を見たときの驚きは鮮明に覚えています。
文責 山本 晴久
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