Nadcapについて 第2回
前回は、Nadcap認証の取得を検討する場合に考慮すべき事項について記載しました。
前回のコラムを読む(2021.6.4配信)>>>
今回は、Nadcap認証を取得するために必要な準備すべき事項について解説します。
Nadcapでは、特有の用語が使われていますので、先ずその定義について述べます。
・ PRI(Performance Review Institute)
SAE(米国輸送機技術協会)の下部組織でNadcapに関する運営や認証を行う非営利団体をいう
・ サブスクライバー(Subscriber)
Nadcapの認証制度に主体的に参加し、航空宇宙関連部品メーカ(サプライヤ)にNadcapの認証取得を要求するOEM企業(機体メーカ、航空機エンジンメーカ、装備品メーカなど)でプライムと呼ばれることもある
・ コモディティ(Commodity)
Nadcapの対象となる認証分野のことで、熱処理(HT-Heat Treatment)、化学処理(CP-Chemical processing)、溶接(WLD-Welding)、非破壊検査(NDT-Non Destructive Testing)などの区分をいう(カテゴリーと同意)
・ スコープ(Scope)
各コモディティで分類される特殊工程の個別の工程をいい、溶接(HT)では、Fusion Welding、Electron Beam Welding、Laser Welding、Resistance Welding、Brazing などがある
4. 認証範囲(スコープ)を決める
自社の対象施設で実施している全ての特殊工程を認証範囲とする必要はなく、航空宇宙関連製品又はサブスクライバーから要求されている製品を処理する工程のみでいいです。(認証範囲はなるべく少なくする方がよいと思います)なお、航空宇宙関連製品とそれ以外の製品(民需品)を区別する体制が整っていることが重要です。
5. 受審に向けた事前準備
(0) 認証を取得すると決定した場合、準備期間はそれぞれの状況にもよりますが、概ね1年位前から取り掛かるように、弊社では推奨しています
(1) eAuditNet(www.eauditnet.com)への登録
eAuditNetは、Nadcapの基幹システムで、審査の準備に必要な文書や情報の入手、PRIへの連絡等の全てをこのeAuditNetで行うため、このシステムへの登録が必要です。誰でも登録できます。
*入手が必要な文書や情報
・ Audit Criteria(AC7XXX、AC7XXX/X、AC7XXX/XS)
・Audit Handbook
・ Operating Procedure(OPXXXX) など
(2) 顧客要求事項の整理
Nadcapの審査では、顧客(サブスクライバー)の要求事項への完全な適合を評価されますので、顧客要求事項を漏れなく整理することが重要です。
先ずは、対象製品の図面に呼び出されている技術要求(スペック)と、それから呼び出される2次、3次のスペックを洗い出してスペックツリー作成することです。
合わせて、これらのスペックの要求事項を整理し、その要求事項への適合をコンプライアンスマトリックスなどで確認していきます。
新規に設備を導入する場合などは、これらの要求事項に合致したものであることへの注意が必要です。改修が必要な場合も同様です。
(3) Audit Criteria(以下、AC)の入手
ACは、Nadcap審査時の審査基準(チェックリスト)であり、コモディティとスコープ及びその顧客により対象となるACが異なるため、注意が必要です。対象となるACについて、顧客に確認しておくことも必要でしょう。
(4) PRI日本事務所との調整
技術要求の整理、ACの入手と合わせて、PRI日本事務所に対象スコープ、スケジュール等に関する相談を行い、助言を受けることです。
その助言を参考に準備を進めます。
以降は、次回に引き続きます。
文責 古郡秀一
「続き(第3回)を読む」
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