#7_AS13100_ヒューマンファクターズ(RM13010)
RM13010が教える「ヒューマンファクター」の視点
航空エンジン産業においては、高度な設備や厳格な品質管理が導入されているにもかかわらず、不適合やトラブルの多くに「人」が関与しています。作業者の思い込み、コミュニケーション不足、疲労、教育不足など、人間特有の要因によって発生するエラーは完全にゼロにすることが難しく、品質マネジメントにおける重要な課題となっています。
AESQのリファレンスマニュアル RM13010「Human Factors」 は、このような人的要因を体系的に理解し、組織として管理するためのガイドラインです。AS13100を補完するリファレンスマニュアルの一つとして発行されており、ヒューマンファクターの考え方や実践事例、人的要因が考えられる不適合調査に活用するチェックリストなどが提供されています。
品質活動では、不適合が発生すると「誰がミスをしたのか」という犯人探しに意識が向きがちです。しかしRM13010では、個人を責めるのではなく、「なぜそのミスが起こる環境だったのか」を分析することを重視しています。
例えば、作業標準が分かりにくかった、作業エリアの照明が不足していた、複数の業務を同時に抱えて注意力が低下していたといった要因は、個人の能力の問題ではなく組織的な管理課題です。品質問題の再発防止を考える際には、こうした背景要因まで掘り下げて対策する必要があります。
RM13010では、PFMEAを活用する考え方を紹介されています。工程上のリスクだけでなく、「人がどのようなミスを起こす可能性があるか」「そのミスを予防・検出できる仕組みはあるか」という視点で分析するものです。これはRM13004で示される未然防止活動との親和性も高く、工程リスクと人的リスクの双方を管理できるようになります。
また、ヒューマンファクターは製造現場だけの話ではありません。そのためRM13010は、トップのリーダシップコミットメントから、一部門だけでなく組織文化としてヒューマンファクターを理解し、継続的に改善することを求めています。
私自身、品質不適合の解析に携わる中で、「なぜ作業者はその行動を取ったのか」を追究すると、教育やルールの問題だけでなく、職場環境や仕組みの問題が見つかることが少なくありません。ヒューマンエラーは個人の責任として片付けるのではなく、組織として管理すべきリスクと考えることが重要です。
また、コミュニケーションエラーに起因した事故や製品不適合などを防止するために、心理的安全性の高い環境を作り出すことも必要です。心理的安全性とは、皆が気兼ねなく意見を述べることができ、自分らしくいられる文化のことを指し、まさに組織のトップ・リーダーが率先して組織文化として定着させると良いと思います。
ぜひ一度目を通し、自社の品質活動にヒューマンファクターの視点を取り入れてみてはいかがでしょうか。
以上
文責:本多正樹
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