昨年の重大ニュースから(その2)

 前回は昨年の重大ニュースの中から自動車メーカーD工業の品質不正のニュースについて言及、今年はこのような品質不祥事が「重大ニュース」に出てこないことを望みますと締めくくりました。しかし残念ながら、先月もT織機による自動車のエンジン認証不正が新たに判明しました。対策に注目していきたいと思います。

 さて、今回はJ芸能事務所元経営者による性加害事件を取り上げます。この種の問題は芸能界特有の問題で、製造メーカーや商社には関係ないとお考えの方もいらっしゃるでしょうが、私はそうは思いません。

 昨年4月 元メンバ-がJ事務所元経営者(故人)による性的虐待被害を告発する記者会見がきっかけとなり、多くのマスコミで報道されました。報道によると1999年に週刊誌がJ事務所経営者(当時)の性加害を報じたことに対し、事務所と経営者は名誉棄損と訴えるも、2004年に「週刊誌の一連の報道は名誉毀損には当たらない」という判決が確定したにも係わらず、メディアの大部分がJ事務所に忖度して報道せず、社会的な問題とはなっていなかったようです。

 この問題が大きく取り上げられた時、「JKTはブラック体質」というネット記事を目にしました。ここでいうJKTとはJKT48(ジャカルタを中心に活動しているインドネシアの女性アイドルクループ)のことではなく、日本のエンターテイメントをリードするJ事務所、歌舞伎、T歌劇団のことを言っています。

 当時 読み飛ばしていた記事でしたが、5月には 歌舞伎役者Eさんの心中事件が発生、一命を取り留めたEさんはその後 両親の自殺幇助で逮捕、起訴されました。また、9月にはT歌劇団の現役団員がパワハラを苦に自殺するという事件も起こり、やはり「JKTは問題ありなのか」という印象を強くしました。

 歌舞伎役者の事件は別として、J事務所のセクハラ問題もT歌劇団のパワハラ問題も、周囲の人は知っていながら、声を上げられなかった、経営者に届かなかったということが問題でした。(J事務所のケースは経営者が当事者でしたが) 結果としてJ事務所は解散、T歌劇団も公演中止に追い込まれ、イメージもダウンし、一部のファンは離れていくことになると思います。

 大なり小なりセクハラ・パワハラはどこの組織でも起こりうることですが、被害者や周囲の人が、組織のトップに問題を伝えて是正を求めることのできる仕組みや雰囲気作りが必要です。

 前回取り上げたD工業の品質不正問題も、一部の人は知っていながら黙認されていた、経営者に伝わらなかったということが原因の一つでした。

 芸能界特有の事情はよくわかりませんが、少なくとも製造業においては品質問題やハラスメント問題を包み隠さず報告できる「オープンレポーティング(開かれた報告)」という文化を根付かせる必要があると思います。

次回は重大ニュースの中でも明るい話題を取り上げます。

文責  有田 智充