【#2】JIS Q 9100:2016の要求事項 リスクマネジメントについて

企業活動には、事故・災害、法務・コンプライアンス、財務、経済・経営、労務、政治、社会など多岐にわたるリスクが考えられますが、品質マネジメントシステムにおけるリスクは、JIS Q 9100:2016年版において2つの取組みを要求しています。

一つは、箇条6.1リスク及び機会への取組みです。箇条6.1.1において、「品質マネジメントシステムの計画を策定するとき、組織は、4.1に規定する課題及び4.2に規定する要求事項を考慮し、・・・取り組む必要があるリスク及び機会への取組みを決定しなければならない。」と、要求されています。

もう一つは、箇条8.1.1運用リスクマネジメントです。「組織は、適用される要求事項の達成に向けた運用リスクを管理するため、組織並びに製品及びサービスに応じて適切に、・・・プロセスを計画し、実施、管理しなければならない。」と、要求されています。

このように、リスクへの取組み方法については、違いがあります。

 リスク及び機会への取組み で管理が要求されるリスクは、箇条4.1の外部(組織を取り巻く状況)や内部(組織内の状況)の課題と、箇条4.2の密接に関連する顧客、外部提供者、監督官庁などの利害関係者の要求事項を考慮して、品質マネジメントシステムが意図した結果を達成できるよう、望ましい影響の増大と望ましくない影響の防止・低減や改善を達成するために取り組むリスク及び機会を決定するものです。

これは、新規分野への参入や既存事業の拡大などの事業計画をするうえでのリスクに取り組むことであり、経営者、事業部長、工場長などのトップマネジメントが、抽出されたリスクに対して対策の要否を判断(リスク及び機会への取組みの決定)すればよいです。従って、抽出されたリスク全てに対して取り組む(低減活動の実施)必要はありません。

組織としての判断になりますので、取り組むと決定したリスクに対しては、箇条4.4.1 f)に従い、箇条6.1.2の注記にあるような、
・リスクの回避(失敗を避けるため既存技術の延長で進める)、
・リスクをとる(失敗を覚悟で進める)、
・リスク源の除去(予め、リスクの原因を除去)、
・起こりやすさの変更(複数の代替計画を検討)、
・結果の変更(影響の程度の軽減策を設定)、
・リスクの共有(他社との共同、外部委託などでリスクを分散)、
・リスクの保有(予防処置で進める)などで取り組むことになります。

また、取り組んだ結果は、箇条9.3マネジメントレビュー で、有効性(計画した活動の実行程度と計画した結果の達成程度)を評価し、要すれば追加の対策や処置を実施することです。

 一方、運用リスクマネジメント では、受注、設計・開発、購買、製造、検査などの箇条8の運用プロセスに関するするリスクに限定し、そのリスクは発生確立や結果の重大性(発生に伴う影響度)などの尺度で考えることです。

これは、一般的なリスクアセスメントやリスクマネジメントのプロセスとしてPDCAを回す活動になりますので、
・リスクを抽出/特定し、
・リスクの分析(Plan:発生確立や影響度で点数付けして評価)、
・リスクの対策(Do:リスクの分析で、受容基準を超えたリスクへの軽減処置の実施、これは基準以下のリスクは処置しなくてもよい)、
・対策後の残留リスクの評価、
・リスク対策方針と対策のモニタリング
・是正(Check:受容基準をモニタリングし、対策の追加変更と是正)、
・リスクマネジメントの有効性評価と是正(Act:計画した活動の実行程度と計画した結果の達成程度を評価し、記録の整備や対策の標準化や戦訓化)を実施することです。

文責 古郡 秀一

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