あるQAマンの体験記 第31回 名古屋品証研での最初の仕事は能力向上でした! 

 

このシリーズの“あるQAマンの体験記”は、筆者が企業人として50年弱の間に品質保証に関わる業務で経験したことを、1つ目の企業である重工メーカの28年は、品質保証の担当者時代のこと、そして2つ目の企業であるパソコン用部品メーカの5年は、管理者時代のことを書いてきました。

いよいよ最後の3つ目の企業として名古屋品証研での経験を書きたいと考えています。ここでは、その大半を経営者として執務を行いましたが、最初は社員規模が120名程度で社員一人ひとりにも目配せできる立場にあり、実務的なことも率先してやってきたつもりです。ここでは、その実務的な経験談を主として取り上げます。シリーズは、5回程度を予定しています。

今回は最初にやろうとした、教育力量管理と能力向上)についてです。結果としては、必ずしも成功ではありませんでしたが、敢えて紹介させていただきます。

自分たちのような検査会社の強さは、人材の能力で決まると考え、「人は財産」というのを合言葉としてきました。検査という任務から、力量がないとできない仕事であり、各人の力量を把握すること、そしてその能力をどう伸ばせるかに腐心しました。

まず、力量評価ですが、検査員に必要な技能と知識を4段階でクラス分けしてレーダーチャートで表示することにしました。下記に示す検査員の例でいえば、部品検査で必要な寸法、プロセスに関する能力はありますが、FAIなどの知識が足りないので強化したいということになり、次年度のこの検査員の教育計画に一般のものと、個別の教育を追加して計画するというものです。

強い分野をさらに伸ばし、弱い分野を補っていくために、必要な教育を各人に施しながら、力量を向上させていくもので、考え方は、教科書的で海外顧客の監査などでも高い評価を頂きました。

2-3年継続しましたが、長期間続けるところまで行きませんでした。原因は、いろいろ考えられますが、一つは強化する力量をどんな要領で誰が支援して向上させるかが明確にできなかったこと、また、教育する資料などの整備が十分できなかったことなどですが、この計画を作ったのは、名古屋品証研に来てすぐに開始しようとしたため、準備が十分できず性急に事を進めたこともうまくいかなかった原因だったと反省しています。

この種の教育をしていくときに大切なことは、先ず、なぜ教育が必要か?ということを明確にすることです。

検査ミスが多い。図面の理解が十分でない。新しい検査装置を使えない。改善の意識がない。QC手法がわかっていない。一つの検査しかできない。・・・・・・など種々あると考えられます。教育ありきでなく本当に困っていることを顕在化させ、そこに地道に取り組むことです。

また、教育ができる人材を作っておくこと、確保しておくことです。更に、教育のマテリアルなども作っておくことです。これは直ぐにできることではなく、あらかじめ助走期間も必要になります。

そして最後に、教育の時間を確保することです。忙しいから教育などやっておれませんというのはよく聞くお決まりのセリフです。

最近になって中小の製造メーカさんを訪問し、お困りになっていることなど聞く機会がよくありますが、教育ができないという話が非常に多いと感じています。人材の育成という企業にとって最も大切な課題に向き合い、真に大切な人材を育てていかれること、そして企業として発展されることを切に願っております。

文責 山本 晴久

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