あるQAマンの体験記 第25回 FAパッケージ

航空機では、初回製品検査(FAI)の記録をSJAC9102「航空宇宙 初回製品検査要求事項」に基づき
様式-1 部品番号証明書  
様式-2 製品証明書-材料、特殊工程機及び能試験
様式-3 特性証明、検査及び適合性評価

の3種類のフォーマットにまとめることになっています。

一方、HDD(ハードディスクドライブ)用のスピンドルモーターの初回生産では、航空機とは異なり多くのデータの評価をしていました。ここでは、特に購入する部品/材料(以下、部品等という)に関する詳細の品質データを部品等のサンプルと共に要求して、評価していた例を示します。

部品加工は、社外から購入する部品も多く、量産が開始されると一気に生産数が上がりますので、個々の部品等の品質は、生産立ち上げ時から安定させておく必要があります。そのためにサプライヤには、FA(First Article:初品)パッケージの作成/評価を要求していました。

少し細かくなりますが、一例として部品のFAパッケージの主たる構成を示しますと
以下のような内容になります。

  • 初回品図面:初品製作量産図面で測定個所バルーン番号を付したもの(FAIフォーマット -3のバルーン図と同じ)
  • ランプアップスケジュール:設備導入計画、生産能力などの明示
  • 初回納入品検査結果(Min 3個):3個のサンプル部品と測定データ
  • 重要寸法に関するCpkの検討:Cpkは、1.33以上
  • 重要寸法に関するGR&R:10%以下合格、10~30%改善計画提示、30%以上不合格
  • QCFC:QC工程図で工程、各工程での管理項目など
  • SPCプラン:適用項目、サンプリング数、周期、適用管理図など
  • 出荷検査基準:サンプリングサイズ、測定装置など
  • 機械加工工程の管理項目:変更が部品品質に影響する項目でツールパス、工具、サイクルタイムなど
  • 工程FMEA:工程のリスクを評価し改善を盛り込んだFMEAの結果を示すもの
  • 梱包形態:梱包仕様と梱包状態の分かる写真
  • 環境関連資料:MSDS(Material Safety Data Sheet)など
  • (機能品の場合は)相関サンプル:機能試験の相関を取るため20個のサンプル提出
    以上がFAパッケージの内容です。

データは膨大でキングファイル一冊ほどのボリュームになっていました。航空機の場合は、生産数量も非常に少ないため統計的な品質評価は採用されていませんが、生産数の大きいモーター部品では、立ち上げ当初からデータのばらつきを評価していること、またバラつきの大きな工程は、改善計画を提示させるなど垂直立ち上げの生産安定を目指していることがよくわかります。

 また計測器に関しても、各測定項目に対してGR&Rで十分な精度を持っていることの証明を求めています。このGR&Rは、航空機でも一部のOEMでは、サプライヤにも評価を求めるようになってきています。

 以上のとおり、航空機よりも広い範囲でサプライヤに品質評価を求めています。サプライヤで生産していただく材料や部品の品質をもとにして、最終製品としてのモーターの品質が作りこまれていくのです。

文責 山本 晴久

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