あるQAマンの体験記 第24回 不適合品への考え方

3か月の研修を経て、フィリピンの現地工場へ品質技術担当の副社長として赴任することになりました。約8000人の工場で、月産200万個以上のスピンドルモーターの生産をしていました。
日本人の駐在員は、50名程度でした。肩書は副社長ですが、実務の統括をするという立場であり部長職のような職務を持っていました。そこで経験したことを数回に亘り、テーマにしたいと思います。

 今回は、不適合品への考え方について話します。

・不良率の考え方が航空機生産で経験したものと違う
この工場では不良率をイールド(直行率)で管理していました。イールドというのは、例えば、100個の最終組立品を作るために必要な部品を投入し、完成検査で不適合品が2個発生するとイールド(良品となった率)は98%ということになります。この数値で各ラインのモデルごとの不良率(不良品率)の目標を決めて管理をしていました。ライン生産による大量生産だからできる管理方法です。

それに比べて、航空機では、生産数が少なくジョブショップスタイルなのでイールドという概念はありませんでした。品質会議などでも、職場単位(例えば機械1係、機械2係など)の不適合率でパフォーマンスを評価することも多かったようにも思います。

・不適合品の取り扱いの違いがある
航空機では不適合品発生時には、不適合内容の技術判定をして使用可、再加工、廃却などいわゆる再審判定をして、使えるものは使うという考え方でした。そして部品生産のようにいわゆる加工請負生産の場合には、顧客が設計権を持っていることが多く、不適合品の処置判定をその都度顧客に伺出るという顧客再審処理をすることも一般的に行われていました。

特にロケットエンジンの部品などは、材料費/加工費が非常に高額で廃却するとコスト面の問題と更に年間の生産数が数個の単位であり良品への巻替えができないため、修理して使うことが必要で、そのための高い修理技術を持っていたように思います。

一方、この工場のスピンドルモーター生産で経験した不適合処理は、“不良品は捨てる”というものでした。先に紹介した再審判定は、B to B契約で最終顧客が技術要求を逸脱しても使用できる、又は修理できると判断するものですが、スピンドルモーターの最終顧客は、一般消費者になるいわゆるB to Cであり一般消費者の判定を得ることが不可能ということがあるのかと思います。考えてみれば不適合品の処理は航空機の方が特殊で、このスピンドルモーターが普通であるのかもしれません。

・Fitness for Useという考え方
また、最終製品は一般消費向けということで、不良品の定義としてFitness for Useという言葉を初めて聞きました。この意味は、お客様が製品を使う段階でいろんな使い方をされるでしょうが、そこで使用上何らかの問題があった時には、製品を提供した側に責任があるという考え方です。
即ち、極端な言い方をすれば、お客様がどんな使い方(Use)をしても、満足して使ってもらえる(Fitness)ということ表した言葉ということでした。どんな使い方をされても問題は出ないこと、問題が出ればそれは品質不良として製品を作った側が全責任を負うということで、これも当然の考え方でしょう。

 3つの事例で不適合品に関する考え方の違いを紹介しました。品質保証の活動の中で不適合品処理は、重要なテーマの一つですが、製品の違いでこんなにも処理の仕方、考え方に差があるということを肌で味わうことになりました。興味深い経験でした。

文責 山本 晴久

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