JIS Q 9100の分かり易い解説について(第7回-2)
前回は、箇条8.5.2で識別とトレーサビリティの識別について説明させていただきました。
今回は、残りのトレーサビリティについて記載します。
トレーサビリティとは、追跡可能であることを意味しており、飛行機事故等が発生した場合でも、その原因、遡及範囲が記録等で追跡できることです。
規格では、「トレーサビリティが要求事項となっている場合には、組織は、アウトプットについて一意の識別を管理し、トレーサビリティを可能とするために必要な文書化した情報を保持しなければならない。」と要求されています。
然しながら、航空宇宙防衛においては、レーサビリティがお客様の要求事項になっていなくても、企業様としては自衛上、適切に管理しておく必要があります。
トレーサビリティの重要性につきましては、実際にお客様等の調査に対応された企業様は、認識度は非常に高いです。
しかし、そのようなことを経験したことがない企業様は、この認識度が低く、なるべく手間をかけないで管理することを希望される場合が、よくあります。
ところが、適切に管理されていない場合、重大な不適合が発生し、お客様が当該企業様に出向いて調査をしたが、原因が究明できず、遡及範囲も特定できない事態になります。
不適切な管理事例を次に示します。
- 問題が発生した製造ロットが特定できない。
契約(納入)ロットと製造ロットが対応していない。(在庫品を納入した場合等) - 作業指示書に使用した材料の製造ロット番号が識別されていない。
- どの改訂符号の作業手順書で作業したのか追跡できない。(変更管理が不十分等)
このような場合、全ての製品をリコールして検査・改修等を行うことになり、莫大な費用が発生するのみならず、お客様に多大なるご迷惑をお掛けすることになり、お客様の信頼を失墜し、企業様の命取りになる場合もあり得ます。
自社のトレーサビリティの管理が適切かどうかは、問題が起きた際に原因の究明、遡及範囲の特定が可能な仕組みになっているかを、先ずは企業様自身で検証されることを推奨します。 次回は、8.7 不適合なアウトプットの管理について説明させていただきます。
文責 松田一ニ三
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