JIS Q 9100の分かり易い解説について(第6回-2)
前回は箇条8.5.1.3 製造工程の検証の目的と効果的な実施方法等について説明させていただきました。今回は、製造工程の検証に関する記録及び製造工程の検証以降の変更管理のあり方について、お話しさせていただきます。
製造工程の検証の記録につきましては、製造工程の検証結果に関する文書化した情報を保持することが規格で要求されています。
例えば、
・図面要求を満足した材料を使用したことを証明する材料証明書、
・作業指示書及び作業手順書等の製造文書から呼び出される設備、
・治工具(NCプログラム含む)等を使用していることが証明できる処理データ(熱処理温度チャート等)、
・試験データ(試験装置からの出力等)
等の記録が要求されています。
そして、図面要求に対する製品の検査・試験結果に関連する記録が必要です。なお、記録につきましては、顧客よりSJAC9102「航空宇宙初回製品検査要求事項」に基づく実施が要求される場合、SJAC9102の様式を使用した報告が求められます。
一方、製造工程の検証以降の変更管理につきましては、製造工程の検証を実施して製造工程を確立させた以降は、凍結(変更は行わない)するのが航空宇宙業界では基本です。製造工程を折角確立させたのに、それを変更すると不適合が発生する恐れがあります。そのためには、製造工程の検証に時間を掛けてでも、念入りに検証することが大切です。
箇条8.6 変更管理でも要求されていますように、どうしても変更される場合は、企業様内の関連部門で変更の理由、品質・納期等への影響、変更を適用する製造ロット等を検討して、変更しても問題ないと判断された場合に限り、変更が可能となります。
ただし、変更される場合は、顧客への事前の届け出、又は事前に通知し承認を取得した後に実施することが、顧客より要求されています。企業様の判断で勝手に変更することは許されておりません。
また、変更した際は製造工程の検証を再度実施して、問題ないことを確認する必要があります。
最後に規格の注記にも規定されていますように、製造工程の検証のことを初回製品検査(FAI:First Article Inspection)とも呼ばれます。しかし、初回製品の検査をして問題のないことを検査することが主目的ではなく、製造工程で問題ないかを検証して問題があれば修正することが目的であることを、理解しておくことが大切です。
次回は、識別及びトレーサビリティについて説明させていただきます。
文責 松田一ニ三
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