JIS Q 9100の分かり易い解説について(第5回-1)

3回に亘り、規格の箇条 8.1.4 模倣品の防止について具体的な活動事例を交えて説明させていただきました。

今回は、箇条8.5.1.2 特殊工程の妥当性確認及び管理について記載させていただきます。先ずは、規格では次の通り、要求されています。

箇条8.5.1.2 特殊工程の妥当性確認及び管理

結果として生じるアウトプットが、それ以降の監視又は測定で検証することが不可能な場合のプロセスに対して、組織は、これらのプロセスについて、次の事項の該当するものについては、必ず、含めた手続きを確立しなければならない。

a) プロセスのレビュー及び承認のための基準の決定
b) 承認を維持するための条件の明確化
c) 施設及び設備の承認
d) 人々の適格性確認
e) プロセスの実施及び監視に対する所定の方法及び手順の適用
f) 保持すべき文書化した情報に対する要求事項

 特殊工程とは、当該工程以降では製品(当該工程)の検査が困難な工程を特殊工程と呼んでいます。特殊工程の事例としては、熱処理、表面処理、溶接、複合材成形等の作業工程及び浸透探傷検査、超音波探傷検査等の非破壊検査工程等があります。

 例えば、熱処理後に硬度計で製品の硬度を測定した場合、製品に圧痕が残ったり、表面処理において塗装の密着度を測定するためにテープテストを行った場合、塗装が剥離したりして、製品価値を失うことになり検査が困難です。

 一方、機械加工の場合は、所定の寸法公差を満足しているかの検査は、ノギス、マイクロメータ、三次元測定機等で測定することが可能であり、測定により製品価値を失うことはありません。又、不適合品が製品として組み込まれるリスクは大変低いです。  

 これに対し、表面処理の下地処理が不十分であっても製品として、気付くことなく組み込まれて、実際に運用開始してから初期の段階で塗装の剥離等が生じたりすることがあります。

 このように、特殊工程の不適合は、運用して初めて問題が発覚することが多く、非常に厳格な管理が要求されます。

 そこで、特殊工程の品質を保証するには、適切な所定の方法、設備、人の力量(必要に応じ)が適切に管理された状況下で作業すること求められます。 次回は、この具体的な要求事項として、規格のa)~f)について説明いたします。   

文責 松田 一ニ三  

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