航空機製造に関する品質保証概要(サンプル)


>このeラーニングは、航空機製造における品質保証の概要をまとめたものです。
個々の細かい要求は、ここでは解説していません。
 最初に、航空機の事故事例の紹介をします。そして、本題のJIS Q 9100に関し、先ず品質マネジメントシステム(QMS:Quality Management System)の目的と便益(ご利益)を説明し、次に本題のJIS Q 9100の概要を説明し、最後に、参考として自動車のQMS規格であるIATF 16949の要求との比較を簡単に紹介してこのセミナーを終わることにします。      
 また、eラーニング形式による小テストがあります。
 挑戦していただけると幸いです。
 よろしくお願いします。


航空機事故の事例ら】

”全日空B787の緊急着陸”の事故例です
>事故の内容は、本文をお読みください。
 B787では、バッテリー問題が当時新聞紙上で大きく取り上げられました。ご記憶の方もおられると思います。
 原因は、設計検証が十分でなかったことと言えます。


“チュニインター1153便 不時着水事故”です。
>事故の内容は、本文をお読みください。
 原因は、パイロットの思い違い(ヒューマンエラー)と整備士のヒューマンエラーにより生じた、本来の製品形態と異なる部品を取り付けた形態管理の問題と言えます。


“インド空軍C-130J機の輸送墜落事故”です。
>事故の内容は、本文をお読みください。
 原因は、模倣品を使ったことの問題と言えます。模倣品は、いろいろな部品でも起こりえますが、電子部品が圧倒的に多いと言われています。
模倣品(counterfeit part)とは?
 →正規製造業者又は承認された製造業者の純正指定品として故意に偽られた無許可の複製品、偽物、代用品又は、改造部品(例えば、材料、部品、コンポーネント)のことを言う。


>“航空機事故の事例から”の補足説明です。
 ここで取り上げた事例は、設計検証の不備、ヒューマンエラーの問題、模倣品の問題などですが、これらを未然に防止することが大切です。他にも、飛行機の事故につながる問題として、ソフトウェアの問題であったり、加工不良/検査不良、整備不良などいろいろ原因はあるようです。


【⒈ 品質マネジメントシステム(QMS)の目的と便益】

 この章では、品質マネジメントシステムの目的と便益(ご利益)について、JIS Q 9100の規格を引用したものと、具体的な事例で説明します。


>“QMSの目的と便益(JISQ9100本文から)”の補足説明をします。
 JISQ9100では、QMSの目的は、企業活動のパフォーマンスを上げることと、更に継続的な発展ができる基盤を作ることと言っています。このQMSを構築するか否かは組織の戦略上決定されるものです。
 一方、便益は、スライドの通りですが、契約事項、法令・規制などの要求事項を守った製品を提供し、顧客満足を獲得し続けることができることであり、また、リスクと機会を考慮した事業展開の下で品質を保証するためのシステム(QMS)を作りあげ、それを第三者機関などに評価されることで、高いレベルにある航空機の品質保証を守りうるシステムが構築されていることを実証できることであります。
(リスクと機会は、21ページ参照)


>“QMSの便益(具体的事例から)”の補足説明をします。 
 スライドの内容をまとめますと、以下ということだと認識しています。
 「経営のトップが品質を第一に捉え、方針を出し、それを各部門、各階層にブレークダウンしていくことができるようにする。それぞれの部門が果たすべき責任を全うし、お客様に満足いただける製品を世の中に送り続けることができる。更に現状に満足することなく、常に品質改善に努めることで企業としての成長が望める。」


⒉ JIS Q 9100の概要】

この章では、JIS Q 9100の概要として目次のような内容で説明させてただきます。


>”航空機の特徴と品質保証の勘所”の一部の補足説明をします。
開発期間が長い
 → B787の例で9年です。
・ライフサイクルが長い

 → YS11で50年近い間活躍しました。車では初代のセリカが今も活躍しているようなものです。
(3)リスク
 製品の新しい設計/製造技術に挑戦する場合など設計/製造面でリスクが発生します。この運用段階で発生するリスクを運用リスクと呼んでいます。評価方法としてはFMEAなどがあります。トヨタ様で実施のQAネットワークなども運用リスク管理の手法です。

(5)長期運用
 修理などの際に、製品形態がわからないと交換部品が正しく準備できないので形態管理は重要です。

(6)国際協力
 航空機、エンジンとも世界中から部品、機能品を調達するので購買管理は、特に重要です。

 これらをQMSの中に取り込んで、品質マニュアル、業務規程などで定めます。「品質マネジメントシステム」を構築するということです。

関連ぺージ21)


>“品質保証活動の概念”の補足説明をします。
 前のページで「品質マネジメントシステム」の構築が必要と言いましたが、少し歴史的に振り返りますと、QC→QA→QMという変遷をしています。
(1)品質管理(QC)
 1960~1970年ごろ日本に導入され、品質管理の活動が一気に広がりました。品質管理は、主として製造品質のばらつきをなくす活動でした。
(“安かろう、悪かろう“からの脱皮)

(2)品質保証(QA)
 1980年以降、特に設計から製造まで一貫して行う製品では、製造品質だけ抑えても設計がよくなければ、お客様に満足いただけるものにはなりません。お客様に良い製品という安心感を与えられる活動をすることです。

(3)品質マネジメント(QM)
 2000年以降、品質をマネジメントの中心に据え、体系的に品質保証を行うシステムを作るとともに、PDCAにより継続的な改善を行い、お客様の満足を得る活動です。(PDCAについては、20ページ参照)


>“QMをどう構築するか?”の補足説明をします。
(1) 各部署が品質を保証するために実施する事項を契約段階から設計、製造、納入に至るすべての段階で品質を保証する手段を文書化することから始めます。各部門が契約から納入に至る各段階で実施する事項をフロー図としてあらわしたものに品質保証体系図次ページ参照)があります。
(2) それらを社員全員が理解し、規定通りの作業を実施することが大切です。規定通りできないなら声を上げることが大切です。また実施したことを記録します
(3) 更に、その手順を守っていることを内部監査などで確認し、自ら評価し、守れていないときは、改善をしていくことです。いわゆる自浄作用です。15ページを参照ください。

(関連ぺージ17)








>“品質保証体系図”の見方について解説します。
フロー図と下記記載内容を比較しながら確認ください。
 品質保証体系図では、左の縦の列に契約から設計、製造、納入などのフェーズを示します。そして横軸に顧客、社内の各部署、そして一番右の縦の列に関連標準類(業務規程)を記載します。
 この例では、受注段階では、契約内容の確認、見積作業があり、営業部、製造部、品質保証部、技術部、資材部が検討し参加し、「◎」のある営業部が取りまとめることになります。以下同様に設計作業を技術部が取りまとめ、デザインレビュー(設計が「◎」)、設計/開発の検証を実施していきます。これ以降は省略します。
 このように各段階で見積、設計、生産プランニング(作業手順書の作成)、材料等受入、加工、検査、出荷、不適合処理、顧客クレームなどが順に処理されていきます。それぞれがプロセスというわけです。プロセスの解説は、18.19ページで行います。


>“内部監査”の補足説明をします。
(1)内部監査
 内部監査を実施するメンバーは、教育を受ける必要があります。外部機関で研修を受けることもよく行われています。

(2)監査の評価基準
 規定通りに作業を行ってもプロセスが有効に機能してなければ意味がありません。KPI(Key Performance Indicator)により、可能な範囲で定量的に(定量化できないときには定性的でも可)目標を決め達成できたかどうかで有効性が評価されます。最近の認証機関の審査では、この有効性を大きく問われるようになりました。

(3)監査の種類
 監査には第一者監査(内部監査)、第二者監査(顧客による監査、組織の供給者監査)、第三者監査(認証機関による監査、監督官庁による監査)があります。社内のルールを熟知している第一者監査(内部監査)がある意味で一番厳しい監査ができることになります。自浄作用が的確に行うことにもつなげられます。【参考】

 IATF 16949では、内部監査プログラムとしてQMS監査/製造工程監査/製品監査を行うように規定されています。この製造工程監査、製品監査はIATF 16949の特徴です。(JIS Q 9100は、QMS監査がまずは主体です)

(関連ぺージ13)


>“製品要求事項とQMS要求事項”の補足説明をします。
 ここに示すように契約上の要求と言えば、先ずは製品要求事項が思い浮かびますが、QMS要求も契約上の要求です。
①製品要求事項(技術要求事項)
 左側のフローですが、図面・スペックなどの要求を受けて、サプライヤへの発注、作業・試験・検査手順書などを作成し、実作業の段階では、記録などを取ります。これらは、技術要求から発生する一連の作業となります。技術要求は製品仕様を決める上で必要不可欠のものと言えます。

②QMS要求(管理要求事項)
 一方では、右側のフローの通り、その技術要求に追加される形でQMS要求があります。QMS要求に品質マニュアル、細部の業務規程作成の要求、記録を取ることの要求などがなされます。
 この2つが相まって製品要求とQMSによる品質保証の管理要求の両方を満足することにより製品の品質が保証されることになります。


>“QMSの文書化した情報”の補足説明をします。
 13ページでシステムを文書化すると言いましたが、記録を含めた文書化した情報の説明をします。
 QMSの文書と記録体系ですが、品質マニュアル、業務規程、手順書等を文書と言い、維持管理をする必要があります。即ち規定内容に変更が必要な場合には、必要な都度、改訂し、維持するということです。一方、業務規程の内容が実施されたことを示すのが記録です。記録は保持することが大切です。即ちデータのセキュリティーも含めた管理が必要になります(保持ですから、書き換えなどあっては一切許されません)。
 これらの文書体系はピラミッド型になっていて、トップに品質マニュアル、次に業務規程、試験/作業/検査手順書などとなります。そして最後に記録があります。

【例:トヨタ様の体系】
 品質マニュアル
  →FQMA 001「航空機部品事業品質マニュアル」  
 業務規程
  →FQMA~FQAH XXXなどの番号体系 更に手順書として工作図、作業指示書などがあると思います。


>“プロセスアプローチ”の補足説明をします。
 品質保証のプロセスの細部プロセスとして、受注、設計・開発、購買、製造、教育・訓練、不適合製品の管理等の活動などがあります。それぞれのプロセスを有効に維持することで結果として全体のプロセスが適切に維持されるという考え方です。
 「規格 図1」にプロセスの前後の関係をフロー図で示していますが、プロセスの実施に必要なインプットがあり、それを使って実際のプロセス活動があり、アウトプットを適切にタイムリーに出すことが必要です。

 次ページにプロセスの例を示しています。

(関連ぺージ13/14)


>“プロセスアプローチ”の続きです。
【追加解説】
 設計から製造納入までの各プロセスのインプットとアウトプットの例を示しています。前のプロセスのアウトプットが次のプロセスのインプットになります。
 設計(仕様)、プランニング、初品製造/検査、継続生産/納入、更にこのフローには書いていませんが、納入後の管理などの各プロセスなどを確実に実行し、PDCA(次ページ)により改善していけば、製品の品質が向上し、最終的には顧客の満足につながります。

(関連ぺージ13/14)


>“PDCAサイクル”の補足説明をします。
 12ページで説明したようにQMの活動の特徴は、「品質方針、目標の下、PDCAを継続的に行い、品質要求を満たす能力を高める活動」 という定義をしていました。
 例えば、品質目標でラインの不適合率を1%とし現状が5%なら、不適合率を下げる対策を計画(Plan)し、実行(Do)します。そして不適合率は、目標の1%まで下がらなければ、評価(Check)し、さらに対策(Act)を取り、1%が達成するまでPDCAを繰り返すことになります。現場での改善などは、このPDCAを当たり前のようにやっていると思います。現場での改善だけでなくQMSの改善などにも、このPDCAは使われます。製品品質の改善だけでなくQMSに関しても常にPDCAで改善をすることが大切です。


>“リスクに基づく考え方”の一部の補足説明をします。
(1)リスク (2)機会
  JIS Q 9100(ISO 9001も同じですが)では、リスクに基づく考え方が重視されています。ここでリスクというのは、事業に関する「リスク」であり、もう一方の「機会」とも同時に考えていく必要があります。「リスク」は、いわゆる向かい風の状況で、「機会」は、追い風を受けて打って出るタイミングのことです。(運用リスクとは、主として製品のリスクで、このリスクとは異なります。11ページ参照)

(3)リスクに基づく考え方
 不適合の予防処置、不適合の分析、再発防止がJIS Q 9100の2009年版では要求されていましたが、同2016年版では、予防処置に代わって、広義のリスクが定義され、「リスクと機会への取り組みを計画し実施すること、リスク及び機会の双方への取り組みによって品質マネジメントの有効性の向上、改善された結果の達成、好ましくない影響の防止のための基礎が確立できる」 と規定されています。

 やや難解な表現となっていますが、事業に潜むリスクと逆に飛躍できる機会の双方を考慮し、事業の計画を打ち立てていく。その事業計画を遂行するにあたってQMSを構築し有効性のあるプロセスを作りあげ、常にPDCAで改善し、結果として製品リスクを含めたリスクを回避をするということです。

(関連ぺージ8)


>“品質マネジメントの原則”の一部の補足説明をします。
⒌ 改善
 プロセスの目標値(KPI:Key Performance Indicator)を守れていないときに改善を行う。更に改善の継続性が要求されます。

⒍ 客観的事実に基づく意思決定
 データでの裏付けが大切であり、いわゆるKKD(経験、勘、度胸)で判断してはいけないということです。

⒎ 関係性管理
 顧客と供給者のみならず密接に関係する利害関係者との関係をマネジメントするとありますが、ここで利害関係者とは、顧客と供給者に加え、監督官庁、株主、地域社会、社員なども含まれます。


>“米国の航空機産業の慣行(ご参考)”の補足説明をします。 
 JIS Q 9100に航空機の先進国である米国の慣行が色濃く反映されています。
⒈システム保証
 航空機を製品として作り上げる際に、先ずは物つくりのシステムを作るという考えです。ルールを作り遵守させることで、勝手に手順を変えることは厳禁です。
⒉契約社会
 定着率が悪いため、作業手順書など文書を整備し、人が変わっても同じやり方で作業をしてもらう必要があります。
⒊三権分立
 検査(司法:裁判所)、設計(立法:国会)、製造(行政:内閣)が相互にけん制することです。生産工場で言えば、設計作業に対して、製造、検査も一緒になって、設計審査をする。製造審査で設計が参加するということであり、更に最後の砦として検査で品質を保証することになります。

⒋性悪説による運営
 品質のダブルチェック、そもそも性悪者のもとで不正などできないようにしてしまうことも大切です。


【⒊ 航空機部品製造の規格上の特徴(自動車との比較)】

 この章では、航空機部品製造の規格上の特徴(自動車との比較)を目次のような内容で説明させてただきます。


>“製品としての特徴”について一部の補足説明をします。
自動車】
 自工程完結に象徴されるように問題があればすぐに改善する文化
航空機】
 実証された作り方を守り続けることで品質を担保する文化「お客様」
 自動車は基本的に一般消費者向けです。Fitness for Useである必要があります。航空機では製品仕様書を契約相手側と交わし、その仕様書に合致させることが必要になります。(Fitness for Useとは、お客様がその製品を使えないなら、仕様に合致した製品でもクレームになる)

「生産数量」
 自動車では大量生産であり、製造で統計処理などが使えますが、航空機では数量が少なくて使えないところが多くあります。

「部品点数」
 航空機は自動車の100倍くらいあります。一つの部品が欠品しても完成機にはならない訳であり、SCM(Supply Chain Management)が重要です。

「ライフサイクル」
 定期的な点検修理により、部品の定期交換なども実施し、長期の運用に供しています。


>“JIS Q 9100/IATF16949/ISO 9001の関連”の補足説明をします。
【JIS Q 9100(2016年版)】
 ISO 9001(2015年版)をベースにして、航空宇宙防衛の特別要求を追加しています。航空宇宙産業の品質保証要素として特徴のあるのは、運用リスクマネジメント、形態管理、クリティカルアイテム・キー特性、購買管理、特殊工程管理、初回製品検査(FAI)、検査・試験・検証、コンプライアンス、JIS Q 9100の文書/記録管理などであります。

【IATF 16949(2016年版)】
 ISO 9001(2015年版)をベースにして、自動車の特別要求を追加しています。自動車の品質保証要素として特徴のあるのは、顧客重視、 パフォーマンス重視、変更管理、製造工程重視、試験所要求事項、製品安全、企業責任、ソフトウェア、供給者の管理 、トレーサビリティ、NTF (Non-Trouble Found)対応を含む補償管理、APQP(先行製品品質計画)、PPAP( 生産部品承認プロセス)などであります。


>“IATF 16949の構成の特徴”の補足説明をします。
 IATF16949は、前ページで説明したように、ISO9001に追加した事項が多くありますが、特に特徴的なのが、コアツールとして5つを組み込んでいることです。最近は、航空機のQA要求の中にFMEA、APQP、PPAPなどの要求がされるケースが出始めました。MSAに関してもGR&R(測定における繰り返し性と再現性の評価)など要求されることがあります。SPCも生産数が多い時には、適用しています。


>“JIS Q 9100 と IATF 16949の比較”の補足説明をします。
 JIS Q 9100 と IATF 16949の比較は、表の通りです。
 ここでは製品の使われ方からくる要求の特徴を挙げています。航空機は、何といっても安全性、信頼性などが特徴で、自動車では、リコール、フィジビリティスタディ、FMEAの具体的要求があるなどが特徴です。


>“JISQ9100 と IATF 16949の比較”の続きです。
 JISQ9100 と IATF 16949の比較は、表の通りです。
 ここでは製品の生産のやり方(多品種少量、手作り)からくる要求の特徴を挙げています。航空機では異物管理、ヒューマンファクター、部品枯渇対応などが特徴で、自動車では、TPM、コンティンジェンシープラン/BCP、出荷停止権、DFMAなどの要求が特徴です。








>今回の解説の範囲は、
【序文、箇条1~6】
 JIS Q 9100の概要として航空機の品質保証の特徴、QMSとは、プロセスアプローチとは、PDCA
とは、リスクと機会とは、内部監査とはなどを解説させていただきました。
【箇条7~10】
 要求の具体的な中身は、今回は省略させていただきました。


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