運用リスク管理の最終回。今回はリスク管理の効能について解説します。
連載コラム1:リスク管理 できていますか?
連載コラム2:運用リスク管理をどう進めるか
連載コラム3:運用リスク管理 このように進めました

数年前に、大手重工メーカの方による「リスク管理」に関する講演を拝聴する機会がありましたが、冒頭「リスクは恥だが役に立つ」とお話をされました。テレビドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」が大ヒットした少し後でしたが、リスク管理の妙を一言で言い当てた表現であり、感心したことを記憶しています。

前回までのメルマガで解説したとおり、新規プロジェクトを立ち上げる際などに、心配事(リスク)を抽出して、組織として特定することが「運用リスク管理」のスタートポイントになります。

一般的に「技術者はプライドが高い」と言われますが、ことリスク管理においては、いい恰好をせず、見栄を張らずに、正直ベースで心配事(リスク)を洗い出して組織で共有することが必要になります。

一人の技術者として、技術的な心配があると言い出すことは「恥」かもしれませんし、上司から「そんなことも確証がもてないのか」「これまでの実績があるだろう」と責められるかもしれません。
あるいは上司である部門長も社長や事業部長に、技術的な心配があると言い出すことも部門の「恥」、また他部門から「心配事項」を指摘されるのも「恥」かもしれません。
しかしながら開発の終盤で、突如技術的な問題が明らかになってはプロジェクトとして致命的な問題になりかねません。開発が遅れたり、納期が間に合わなくなったりすることを未然に防ぐためには、初期の段階で小さいことでも心配事項として洗い出して、対策を検討して、リスクを回避していく、あるいは軽減していこことが必要で、そういった活動がプロジェクトの成功につながります。

まさに「リスクは恥だが役に立つ」です。日常の仕事の中で、「技術的な心配事がある」ということは言い出しにくいかもしれませんが、「運用リスク管理」のプロセスを上手に活用して、心配事をリスクとして組織内で共有し、組織として対策を進めていけば良いと考えます。

プロジェクト立ち上がり時に運用リスクを洗い出して、それぞれのリスクに対して的確な回避策/軽減策を明確にした時点で、リスク対策はほとんどできているとも言われます。リスクを洗い出す際には、関係部門の技術者が集まってディスカッションしたり、社内有識者のレビューを受けたりすることで、多様な観点でリスクを抽出することができます。

一方で、開発が進むにつれて、評価試験・試作の結果や、顧客の技術要求の変更などによって新たなリスクが発生する可能性もあるので、管理対象とする「運用リスク」を適宜追加していくことも必要です。運用リスクの対策状況をフォローするプロジェクト推進会議などで、追加リスクの有無を検証していくと良いでしょう。

以上、4回に亘って「運用リスク管理」について解説させていただきました。
最後までお読みいただきありがとうございました。

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文責 有田 智充

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