今回で3年余り続けてきたメールマガジンを一旦休筆させていただこうと思っています。
あるQAマンの体験記も35回に亘り執筆してきましたが、最終回として計測センターの設立で話を締めくくることになります。

品証研に来てからは、計測技術向上の手段として、自前で計測設備を保有し、自らの技術を上げたいと考えてきました。それが計測センター構想です。そのためには、先ず計測技術、特に三次元測定機の利用技術を高め、またエンジン部品特有の表面粗さや、R形状なども精密に測定できなければなりません。幸い、客先の工場で若手の検査員も育ち、少し余裕を捻出できる状況になり、計測センターの検討を開始しました。

先ず場所を探すことから始めました。広さ/天井高さなどが適していること、床強度が問題ないこと、地の利のいいことなどから、小牧インターから7-8分程度の小牧城の少し北に位置する倉庫を借り、恒温室化するべく倉庫内を工事して、大型三次元測定機、表面粗さ/形状測定機、3D形状測定機を導入して、最低限の測定技術を整備し、2018年1月から検査事業の操業を開始しました。

そこで思わぬ話が飛び込んできました。経産省、名古屋商工会議所が主催している航空エンジン部品加工トライアルという企画があり、中小の機械加工メーカが試作した部品を検査しないかというオファーがあしました。こけら落としの仕事としてこれ以上の検査はないと思い、是非ともやらせてくださいと2つ返事で快諾しました。

ところが、現実は甘くなく、七転八倒することになりました。部品が2種類あり、それぞれの品目で5-6社が加工トライアルに参加され、1月の最も寒い時期に次々に部品が搬入され、検査をすることになりました。

しかし、ここで起きた問題は、部品の取り付け治具が必要なのに同時に提出されていない、自動測定プログラムで計測しようとしたが、試作品ということもあって図面要求から大きく寸法が逸脱していて自動では測定できない、また三次元測定機の取り扱いになれないところで測定プローブが壊れるなど問題が続出しました。

計測データ提出期限が2月の中旬であり、2月初めの4連休を最大限使い、且つ2直で凌ぐなどやっとの思いで納入できました。最も寒い季節で検査員が風邪をひかないようにと願ったりしたことが思い返されます。出荷は、夜遅くになりましたが、無事完了させることができました。その時のワンショットが下記の写真です。

計測レポートの作成も筆者が担当して、何とか乗り切ることができました。

その後クイックビジョン(2次元形状測定機)、小型三次元測定機なども導入し対応能力の拡大を図りました。

特に大型薄肉の高精度部品の測定を得意としており、変形しやすい部品を拘束状態で計測するなど長年経験した航空エンジン部品の計測技術をベースとして、エンジン以外の航空機コンポネントの部品、他の産業分野の部品にも対応することで技術を磨いています。

 航空機関係の生産がコロナ禍で一時期は大きくスローダウンしましたが、回復の兆しを見せています。この計測センターの事業も今後更に大きく伸びていくことを願っています。

文責 山本 晴久

追伸 

自分の会社人生を振り返りますと、先ず品証部門への配属は、学生時代に精密工学科に在籍しており修士論文で計測に関わる技術の研究をしたことから、重工メーカ(三菱重工)での配属は、検査に関わる部署になったのではないかと推測しています。

振り出しは、航空エンジンなどの検査計画業務で、航空機部品に関する検査技術の向上を担当し、特殊検査治具(ファンブレード検査)の考案、工場として初めての三次元測定機の導入、特殊投影機(タービンディスク検査)の導入など推進するとともに検査方法の開発などさせていただきました。

その後品質保証部門のみならず、製品部での管理業務、企画業務なども担当させていただき、ご縁があってか、別の会社(日本電産:Nidec)に移り、航空機からパソコン部品の分野と全く別の品質保証も経験させていただきました。

そして、この名古屋品証研では、主たる業務が航空機部品の検査業務であり、振り出しの仕事にまたブーメランのように戻ってきたと感じています。これも何か不思議なご縁と思っております。

コロナ禍で大きな打撃を受けた航空機産業ですが、飛行機のおかげでグローバルに人の移動が始まった以上、必ず需要が戻ること、更にエアモビリティなど近距離間の人々の移動手段がこれから一気に伸びていくことが予想されることなど、広義の航空機産業で捉えると将来に大きな夢を描くことができます。

この業界で、特に最高度の安全性が求められる航空機製品の品質保証という非常に重要な業務に携わることができたこと、コンピュータ部品という高信頼性の、かつ最先端の技術分野で、航空機とは異なり超大量生産の製品の品質保証に携わることができたことなど非常に幸運な仕事人生を送ることができました。

今思い返しますと、これらの経験は、自分一人でできたわけでなく、仕事仲間、上司、配下の方々のお力添えを頂いた結果として花開いたものと皆さんに深く感謝しています。

メルマガを書き始めて、3年以上に亘り、ちょうど150回を数えることになります。品質保証のツール(QtB)をシリーズで115回、あるQAマンの経験談で35回の計150回を執筆させていただきました。

つたない経験からメルマガを執筆させていただき、500名を超える方々に毎週配信させていただきました。我慢強く付き合って頂いた皆様には、感謝いたしております。また、機会があれば執筆させていただきますが、一旦は、連載という形では、筆をおかせていただきます。長い間、ありがとうございました。

                                山本 晴久

 当社では主に航空宇宙の品質に関わるご支援をしております。
 以下、リンクです。
JIS Q 9100:2016 認証取得支援
Nadcap 認証取得・更新支援
JIS Q 9100:2016 規格解説セミナー
JIS Q 9100:2016 内部監査員養成セミナー
・その他、お気軽にお問合せください。

名古屋品証研株式会社

RECENT最近チェックしたコンテンツ

RELATED CONTENTS関連コンテンツ