航空機の製造品質を守る一つの手段として工程凍結という考えがあります。工程を一旦確立すると以降は、変更しないというものです。
JIS Q 9100の世界では、工程変更管理の規定は、下記のような要求となっています。

箇条8.5.6 変更の管理
組織は,製造又はサービス提供に関する変更を,要求事項への継続的な適合を確実にするために必要な程度まで,レビューし,管理しなければならない。
製造又はサービス提供の変更を承認する権限をもつ人々は,識別されていなければならない。
注記 製造又はサービス提供の変更には,工程,製造設備,治工具又はソフトウェアプログラムに影響を与える変更が含まれ得る。
組織は,変更のレビューの結果,変更を正式に許可した人(又は人々)及びレビューから生じた必要な処置を記載した,文書化した情報を保持しなければならない。

ここでは、太字の斜め文字がJIS Q 9100での航空宇宙関連の追加要求事項であり、変更を承認する人を決めることと変更の対象として、工程、製造設備、治工具又はソフトウエアとしています。
工程を凍結するという要求ではなく、変更を管理せよという要求になっています。

航空機の品質保証で工程凍結がキーワードのように言われるのは、可能なら凍結するということで、みだりに変えないということの意識を徹底するためのものであります。“しかるべき手続きを踏んで工程は変更するべき”ということを徹底したいがための旗印的なものというように考えていいでしょう。

少し余談になりますが、工程凍結は、航空機の品質保証では、普通の概念ですが、自動車関係では、文化が違うというようにも聞きます。かつて自動車メーカの品質保証の専門家とお話しした際、そのことが少し話題になりました。

自動車では自工程完結という言葉があるそうで、自工程に問題があった場合に一旦ラインを止めても、自工程で責任をもって解決する、そこでは工程の変更なども必要な場合は実施されるような話でした。もちろん、工程の検証はされているのだと思います。自動車ではラインを止めないことでの自工程完結という言葉を旗印にされているのでしょう。業種の違いで興味深いところです。

さて、“変更にトラブルあり”とよく言われます。航空エンジンで変更管理の厳しさを筆者も担当者として経験してきました。部品生産に使う手順書の表紙には大きな字で “Process to be frozen”と書かれていたことを思い出します。

その心は、次のようなことだと理解していました。
即ち、量産形態で製造された部品を組み立てて性能、耐久性試験などを長期間の試験を経てエンジンの型式が決まる。量産で品質を担保するには、同じ材料、同じ加工法、同じ加工条件などを用いて製造した部品を組み上げることで、最初に評価したエンジンでの性能と耐久性などが同一のもの(品質)であることを保証しようとするものであります。

従って、加工法などを変えると何等かの品質変化が生じる可能性があり、性能、耐久性が保てなくなるのではないかを心配し、工程を変更しないことで品質を担保している訳であります。

しかし、不適合発生後の対策として、また、製造コストの見直しなどのために変更は不可避であり、万一工程の変更をする場合には、必要ならば変更後の部品で再評価するなどして検証し、問題なければ変更を承認するという考え方です。ここをまず理解して欲しいと思います。

次回は、変更管理の進め方についてお話しします。

文責 山本 晴久